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高校生向けの国語辞典を比較し おすすめを考える【2020年版】

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主な小型の国語辞典の中から、高校生に向いている辞書として次の5つを選び、おすすめを考えます。並びは初版の刊行順です。

『新選国語辞典』
『旺文社国語辞典』
『三省堂現代新国語辞典』
『学研現代新国語辞典』
『角川必携国語辞典』

結論からいうと、最強は『旺文社国語辞典』の『小型版』です。

現代文、古文、文学史、歴史など幅広い分野の学習に役立ち、コンパクトで引きやすく場所をとりません。持ち運びにも便利です。以下はこの理由の詳細です。

 

 

この5つを選んだ理由と共通する特徴

 

これらにはまえがきや編者のことばに「学徒の言語学習」「高校生」「高等学校国語教科書への対応」などという文言があり、各社が高校生の学習を編集方針に入れて作っていることがわかります。主に次の共通する特徴があります。

 

文学史に出てくる作家や作品の固有名詞の収録

「清少納言」や「夏目漱石」、「枕草子」や「こころ(作品名)」など。大学受験での文学史対策だけでなく、辞書を引きながらふと出会う作家や作品に興味を持ち、知識や読書の幅を広げることができます。
(※注意 『学研現代新』には固有名詞の収録なし)

 

基本的な古語の収録

例えば「をかし」や「あはれ」の解説など。高校生の国語に古文があることへの配慮です。古語が現代語と並んでいることで、ことばを立体的に知ることもできます。また、ふと古語が気になったとき、古語辞典が手元になくても国語辞典でさっとわかれば便利です。
(※注意 『三省堂現代新』には古語の収録なし)

 

漢字の筆順の記載

きれいな字を書くためには正しい筆順の情報が必要です。高校のテストや大学の入試には国語以外にも記述式の問題や小論文がありますので、字がきれいなことはそれだけで採点者に好印象を与えて有利です。これは実際に、前職の学校法人で入試の採点をして経験しているところです。漢和辞典を引かなくても筆順が確認できます。
(※注意 『新選』には筆順の記載なし) 

 

ちなみにこの3つの特徴がすべてそろうのは、『旺文社国語辞典』と『角川必携国語辞典』です。

  新選 旺文社 三現代新 学現代新 角川必携
作家名や作品名 ×
古語 ×
筆順 ×

 

その他の特徴としては、『三省堂現代新』と『学研現代新』が収録や解説する「評論文キーワード」、『新選』と『旺文社』の付録にある「文化史年表」、『学研現代新』のコラム「小論文のツボ」、などです。これらも高校の学習や大学受験で役立つ内容ですね。

 

高校生の学習向け辞書選びの注意点

 

上であげた特徴は、国語辞典で人気のある『岩波国語辞典』『新明解国語辞典』『三省堂国語辞典』『明鏡国語辞典』には、実は一つもありません。

この点を理解して選ばないと、例えば「日本で一番売れている『新明解国語辞典』を買ったのに、文学史に出てくる作家も歴史上の人物も載っていなくてガッカリ!」となりかねません。

逆にこの特徴をわかった上で、目的を持って他の辞書を選ぶ高校生はステキです。ちなみに社会人の私が現在使うことが多いのは、『岩波国語辞典』と『三省堂国語辞典』です。

 

版元、発行年、収録語数の比較

 

  新選 旺文社 三現代新 学現代新 角川必携
版元 小学館 旺文社 三省堂 学研プラス 角川学芸出版
初版 1959年 1960年 1988年 1994年 1995年
最新版 2011年 2013年 2019年 2017年 -
前の版 2002年 2005年 2015年 2012年 -
版数 9 11 6 6 -
収録語数 90,320 83,500 77,500 77,000 52,000

初版からの歴史が長いのは、 『新選』と『旺文社』です。

『旺文社』は第11版の2020年重版(改訂ではない)で、「令和」を立項し「天皇誕生日」の日付を最新にしました!すばらしい!

『三省堂現代新国語辞典』は前身の『三省堂現代国語辞典』の発行が1988年。『新』としては1998年発行です。

『三省堂現代新』と『学研現代新』は最新版の発行がこの3年以内と新しく、改訂も早いことが魅力です。 

収録語数については、『新選』が『旺文社』より多いのは、難しい漢字の収録や「をかし」などの古語が現代語の説明の中から独立しているからのようです。実用に差を感じません。

『旺文社』の収録語数の多さは、後述する社会科の固有名詞の比較でメリットが出てきます。

『角川必携』は発行から25年改訂がなく残念です。収録語数は公称は少ないですが、解説に「見出し語は極力厳選し項目の立てかたを工夫してその倍の語数に匹敵する内容を確保した」とあり、確かに使っていて基本的な日本語で不足を感じることはありません。逆に歴史の百科項目は一番多いようです。しかし、最近一般的になったカタカナ語には弱く、例えば「コンプライアンス」は収録されていません。またオノマトペも少ないように感じます。

 

収録項目の比較

 

編集方針で差が出る「固有名詞」「百科語」で比較します。

  新選 旺文社 三現代新 学現代新 角川必携
清少納言 ×
枕草子 ×
夏目漱石 ×
こころ(作品) ×
川端康成 ×
大江健三郎 × × × ×
孔子 ×
論語
ゲーテ × ×
ファウスト × ×
応仁の乱 ×
織田信長 × × ×
本能寺の変 × × × ×
徳川家康 × × ×
江戸時代 ×
カエサル × × ×
フランス革命 × ×
イギリス × ×
ミトコンドリア × × ×
ニュートン(単位) ×
  新選 旺文社 三現代新 学現代新 角川必携

『新選』は収録語数が多くても、歴史に弱くさびしい印象です。

『旺文社』は文学史のほかに、歴史や国名の項目があります。

『三省堂現代新』の文学史の項目には存命中の作家がいます。歴史や国名の項目はありません。

『学研現代新』には、国語の文学史上の固有名詞すら一切ありません。

『角川必携』は文学だけでなく歴史にも強い。徳川家の人物はなんと、「家斉」「家宣」「家光」「家茂」「家康」「綱吉」「斉昭」「家忠」「光圀」「慶喜」「吉宗」の11人も立項しています。収録語数が3万多い『旺文社』でも「家光」「家康」「光圀」の3人。この百科項目の強さは魅力です。

 

本文、解説、囲み記事、語釈などの比較

  

新選国語辞典

他にない特徴は見出し語の表記です。和語と漢語の書体を分け、アクセントを赤字で示しています。また、漢字の収録数が一番多い印象です。

本文中に囲み記事やコラムは一切ありません。これが逆に収録語数が多くてもコンパクトにできている要因ですね。

 

旺文社国語辞典

他にない特徴は「中心義」と「変遷」です。

「中心義」の例には、「愛」は「自分の大事にしているものが無事であるよう自分を犠牲にしてまでも守ろうとする思い」、「力」は「外敵にうち勝ち、心や体のはたらきを支え、活発な動きを続けさせる源」など。美しい表現ですね。

「変遷」の例では、古語の「をかし」から現代語の「おかしい」への派生などがわかって勉強になります。

 

三省堂現代新国語辞典

類義語の比較の囲み記事が充実しています。また「ことばの世界」というコラムで、「空」「秋」「山」「手」「楽しい」「考える」「生きる」「わたし」などの類義語や関連表現を幅広く学べます。しっくりくることばや表現を探すのに便利です。

同音異義や異字同訓の語の見出しの上に、相互参照の矢印(←→)がついていて便利です。兄貴分の『三省堂国語辞典』譲りの記号ですね。

 

学研現代新国語辞典

特徴は「評論文キーワード」と「少論文のツボ」のコラムです。

「評論文キーワード」には「情報化社会」「生命倫理」「パラダイム」など、大学入試の文章読解の例文で出てくるようなことばの細かい解説があります。

「小論文のツボ」には「演繹法」「帰納法」や「序論・本論・結論」の解説などがあり、小論文の書き方を学べます。

 

角川必携国語辞典

大野晋先生が「本辞典の精華」という「つかいわけ」のコラムが充実しています。「つかいわけ」以外ののコラムや囲み記事はありませんが、出典や語源などのさまざま情報を注記(▽)に書いています。例えば「生きる」と「息」の語源が同じことを注記で知り、感動しました。サンキュータツオさんが著書で紹介した「うつくい」と「きれい」の違いも注記にあります。

 

「類義語」や「つかいわけ」の解説の比較

『新選』以外の4つには、「類義語比較」や「つかいわけ」の囲み記事があり、「『三省堂現代新国語辞典』の評価。「類義語の比較」が多彩で詳しい辞書」で内容を比較しました。 結果は『角川必携』と『三省堂現代新』の圧勝です。 

 

語釈で「介護」と「看護」の違いがわかるか 

私のチェックポイントの一つです。「「介護」と「看護」の違いがわかる国語辞典はどれだ? 小型から大型まで17種の比較と評価」で、この中で唯一わかる辞書は『新選』でした。この点は大いに評価したいところです。

 

巻頭巻末の付録の比較

 

新選国語辞典

 ・巻末付録
「国語表記の基準(現代仮名遣いなど)」「活用表」「季語一覧」「文化史年表」「漢字一覧」など

漢字は本文中になく巻末に独立。筆順はありません。文化史年表は日本だけでなく外国(西洋と東洋をまとめて一行)もカバーしています。

 

旺文社国語辞典

・巻頭付録
「語源を探る」「国語年表」

・巻末付録
「国語表記の基準(現代仮名遣いなど)」「活用表」「季語集」「手紙の書き方」「世界文化史年表」「数量呼称一覧」「和歌・俳句索引」「アルファベット略語・略号集」など

最も充実しています。巻頭付録はフルカラーの光沢紙です。「手紙の書き方」には封筒やはがきの図まであり便利です。「世界文化史年表」は日本、東洋、西洋が三行に分かれ歴史の勉強にもなります。「和歌・俳句索引」は他の辞書にない付録です。

 

三省堂現代新国語辞典

・巻末付録
「敬語の概要」「手紙の書き方」「季語一覧」「国語表記の基準(現代仮名遣いなど)」「活用表」「ABC略語集」など

 国語の学習に必要十分な印象です。手紙の書き方に図はありません。

 

学研現代新国語辞典

・巻末付録
「活用表」「国語表記の基準(現代仮名遣いなど)」「常用漢字小辞典」「古語小辞典」「アルファベット略語集」など

『旺文社』『三省堂現代新』に比べて、少しさびしい印象です。古語を小辞典として独立させたのは他にない特徴です。『新選』『旺文社』『角川必携』では古語は本文中にあります。

 

角川必携国語辞典

・巻末付録
「活用表」

活用表のみ。これはこれで潔い。その分薄くなり使いやすいので。

 

※この他の各辞書の特徴は、ながさわさんのブログ記事がとても参考になりますので、ぜひ以下ご参照を。辞書選びの勉強にもなります。

国語辞書の購入の手引き 市販15種徹底比較【1種追加】 - 四次元ことばブログ

 

大きさ、重さの比較

 

  新選 旺文社 三現代新 学現代新 角川必携 旺小型版
タテ mm 169 186 186 185 185 158
ヨコ mm 120 139 139 139 139 118
厚さ mm 43 46 40 45 44 38
重さ g 667 835 712 815 807 559
総ページ数 1,600 1,704 1,630 1,824 1,512 1,704

持ち運びや狭い机上に置くことを考え、実測してみました。

『新選』は通常版が小ぶりで別にワイド版があります。ワイド版が他社と同じくらいの大きさです。

『旺文社』は手元にある2017年重版のサイズです。2020年重版を店頭で見たら薄く感じ、実測すると1~2mm薄くなっていました!小型版は通常版と内容は同じで、文字を小さく紙も薄くして本体をコンパクトにしています。文字の大きさは40代後半の私の目には少々辛いですが、高校生ならOKでしょう。

『三省堂現代新』は、通常版の大きさの中で薄さと軽さが際立ちます。

人それぞれの目に負担のない範囲で、辞書は薄く軽く小さいほど使いやすいです。実用の辞書に店頭での見栄えのための重厚さは全く不要です。人気のある『新明解国語辞典』『岩波国語辞典』『三省堂国語辞典』『明鏡国語辞典』のどれもが薄いか小さめかに作られているのは、ヘビーユーザーの声の反映だと思います。この点で、『新選』『旺文社 小型版』や『三省堂現代新』には魅力があります。

なお『学研現代新』にも小型版がありますが、次の収録項目の比較から私は選外にしたので、実物を持っていません。選外の理由は結論に。

 

三省堂現代新国語辞典についての補足情報

こちらは新語や新しい用法の収録の強さが話題になり、いつくが紹介記事がでました。どれもおもしろいので、関心のある方はぜひご確認ください。 

高校生向け『三省堂現代新国語辞典』第6版がヤバいから高校生じゃなくても買え - 四次元ことばブログ

バズった『三省堂現代新国語辞典』第6版。「キメる」「刺さる」…さらに「攻めてる」点を紹介|Zing!

『三省堂現代新国語辞典 第六版』(三省堂) - 編集:小野 正弘(編集主幹)ほか - 沼野 充義による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS

「ギガが減る」に「推しメン」 三省堂が現代新国語辞典に新語やネットスラングを収録した理由 (1/2) - ITmedia NEWS 

ITmedia NEWSの中の、三省堂国語辞典出版部の木村晃治さんの「一般的な辞書の改訂には7、8年ほどかかりますが、現代新国語辞典は教科書の改訂に合わせて4年ごとに改訂しています。短い分、新語も入れやすい」というコメントは注目すべきところです。

 

各辞書はこんな人におすすめ

 

比較した結果から、各辞書をおすすめする人を考えました。

 

『新選国語辞典』

収録語数の多さが正義。漢字も多いほうがいい。和語と漢語の違いにこだわる。アクセントを知りたい。百科項目は文学史ははずせないが歴史は不要。漢字の筆順は不要。小型がいいが、旺文社の小型版はデザインがダメ。

 

『旺文社国語辞典』

百科項目は文学史だけでなく歴史上の人物や国名まで幅広くほしい。和歌や俳句が好き。文化史年表などでプラスアルファの学習がしたい。一つの辞書で機能が多いほどいい。通常版は大きく厚くてもOKなら。小型版は文字の大きさとピンク色の表紙がOKなら。

 

『三省堂現代新国語辞典』

ともかく最新の日本語を知りたい。新語、カタカナ語、俗語や新しい用法に惹かれる。類義語と関連表現も重視。百科項目は現代を含めた文学史ははずせないが歴史は不要。古語はいらない。薄さ、軽さ、引きやすさも重視する。

 

『学研現代新国語辞典』

小論文対策を重視。古語小辞典に惹かれる。固有名詞は文学史を含めて一切不要。「小論文のツボ」「評論文キーワード」のコラムを読んで気に入った。金田一春彦先生、秀穂先生のファン。 

 

『角川必携国語辞典』

ことばの微妙な相違を使いこなしたい。語彙を増やしたい。文学史だけでなく歴史も好き。古語を含めた基本的な日本語の充実が最優先。最近のカタカナ語はいらない。余計な付録も不要。大野晋先生のファン。

 

結論:最強は『旺文社国語辞典 小型版』

 

息子が高校生になったら使ってほしい、という観点での私見です。

まず、あえて紙の辞書を引く意味の一つに、百科語や固有名詞を含め知らないことばとの思わぬ出会いの楽しさがあります。特に高校では幅広い分野にアンテナを張って勉強してほしい。 よって、『学研現代新国語辞典』は固有名詞がなく選外。『新選国語辞典』も、西洋の作家名や作品名がなくあえて選ぼうとは思いません。漢字の筆順もないので。

『角川必携国語辞典』は類義語と百科語に強く、かの井上ひさしさんが絶賛し私も長年愛用した辞書ですが…。1995年の初版発行から改訂がなく、最近のニュースのカタカナ語が不足なので、今の高校生の学習用には選べません。

 

残るは二つ、『旺文社国語辞典』と『三省堂現代新国語辞典』。

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『三省堂現代新国語辞典』は、最新の日本語の内容でリードします。息子がこの辞書を選ぶなら、たくさん引いて類義語や関連表現を学び、語彙を広げて、現代日本語を使いこなしてほしい。薄さと軽さも魅力です。

今回あらためてさっと見ただけで、「回答、返答、返事、応答」「才能、能力」「でたらめ、でまかせ」「天、空」「費用、経費、出費」といった類義語比較の囲み記事が目にとまりました。やはりこの辞書の真価はこの点だと私は思います。

ただし、「古語」がない…。

高校生の辞書には、古語はあった方がいいと思えてきました。古語があって今の現代語があります。古語の世界を通じて日本の古典を学び、日本をより深く知ることが逆に今のグローバル社会できっと役に立つはず。そのためにも古語に触れる機会は多いほうがいい。

 

結論です。
『旺文社国語辞典 小型版』を、高校生の学習に最強な国語辞典に選びます。

基本的な日本語だけでなく、古語、百科語、固有名詞(人名・作品名・地名)や短歌・俳句に触れ、文化史年表も活用し、幅広くアンテナを張ってほしい。小型で薄く引きやすいので、たくさん使って、ここぞという時は持ち歩いてほしい。

実は『旺文社国語辞典』は、『角川必携国語辞典』の後継候補として通常版を買ったものの、重く大きく表紙も固くてこれまでほとんど使いませんでした。数日前に『小型版』を入手し手に取ると、これが実に引きやすい。まさか紙まで薄くしているとは。コンパクトなので持ち運びに有利なだけでなく、教科書や参考書やノートや筆記用具があふれる高校生の机上でも使いやすいはず。小さな字でも私ですら慣れてきたので問題ないでしょう。 

そして、今買うなら必ず2020年重版を選びましょう。「令和」が立項され天皇誕生日も最新です。

ピンク色の表紙の辞書を、男の子が愛用してもいいじゃないですか!

 

以上、高校生向け国語辞典の比較とおすすめの考察でした。

 

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