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角川必携国語辞典の魅力は 国語・百科・漢字・古語の高度な融合

角川必携国語辞典 つかいわけ コラム

社会人が文章を書くための国語辞典に おすすめは角川必携国語辞典」の続きです。私の考える角川必携国語辞典の魅力をまとめます。

 

この辞書の特長は、編者の大野晋先生が「本辞典の精華」と呼ぶつかいわけのコラムのほかに、豊富な百科項目と基本的な漢字項目や古語を収録していることがあります。

こういった特長は旺文社国語辞典や集英社国語辞典も同じなのですが、この辞書が独特なのは、これらが高度に融合して、奥行きや広がりのある立体的な解説が全編にあることです。

例えば、つかいわけの説明や注記に漢字の成り立ちや古語の歴史的な背景が入っていたり、一般的な国語項目の語釈に百科事典のような解説があったりします。

 

例として、魅力的な解説がある項目やコラムを以下に紹介します。

 

つかいわけ 関係・関連・関与

どの語にも「関」があるが、この字はもともと「門」のとびらを閉めるための「かんぬき」を意味していた。だから「関」の付くことばは、みな「門をとじる」「二つのもの(とびら)がしっかり関係をもつ」という意味をもっている。「関係」は…

「関」の漢字一字の意味から説明があります。

 

はんだん【判断】

(注記)「判」は刀(刂)で半分ずつに切ること。「断」は斤(おの)でたち切ること。つまり、ものごとを左右にはっきりと分けて決定すること。

こちらでも漢字の成り立ちから説明します。

 

いきる【生きる・活きる】

(注記)「息」と語源が同じ。

こと【事】[古語]

古くは、口に出すこと(=言)は、そのまま現実のこと(=事)と一致すると思われていた。そのため、「こと」という一語で「ことば」も「ことがら」もあらわした。

とおとおみ

旧国名。今の静岡県西部。東海道の一国。遠州。(注記)都に近い琵琶湖を「淡海(=近江)」というのに対し、浜名湖を「遠つ淡海」と呼んだことから。

以上は古語の知見からの解説です。

古くから日本人にとって「生き」は「息」! また、口に出すことと現実のことは一致すると思っていた! 引き寄せの法則か!? 呼吸や口に出すことばを大切にしようと思います。

 

じゆう【自由】

人間として責任をもって考えたり味わったりする思想と精神の働き。他から何らかの条件をつけられることがないこと。社会的には、契約を結び、財産をもち、企業をおこし、集会や結社をもつことに何の条件もないこと。ただし、人間には絶対的な自由はない。

一般的な説明に続いて突然、「ただし、人間には絶対的な自由はない」と哲学の百科事典にあるような解説が出てきます。

 

じっせんりせい【実践理性】

人間の行為や意志の決定にかかわる理性の能力。⇔理論理性(注記)ドイツの哲学者カントの用語。この能力により、自由・道徳・神の存在など、現象を超越した問題をあつかうことができるという。

じゅんすいりせい【純粋理性】

経験とかかわりなく、先天的にそなわっている認識の能力。カント哲学の用語。⇔実践理性

それでも地球は動いている

従来の天動説を打破して、太陽を中心とした地動説を支持した、近代イタリアの科学者ガリレオ ガリレイが、宗教裁判にかけられて、一応は裁判官に従いながら、帰りがけに言ったということば。

にんげん【人間】 ※成句

人間は考える葦である
人間は万物の尺度である
人間はポリス的動物である

以上、こちらにも哲学の用語が。角川必携国語辞典は哲学好きです。

 

その他に、おもしろい!よくわかる!と感じる内容の紹介です。

 

つかいわけ あいまい・あやふや

「あやふや」とは、言うことや考えが確かな形をとらないということ。「あいまい」とは、かすみがかかっているようにはっきりしない、よくわからないという意味。ただし、英語の ambiguous の訳語の場合は、同じ「あいまい」といっても、「両義的(=二つの意味をもつ、はっきり一つにきめられない)」ということで、本来の日本語でいう意味とはちがう。

英単語 ambiguous が登場します。

 

うつくしい

(注記)「うつくしい」は、心にしみ入ってくるような美をいう。「きれい」は、表面的な美をいう。

「うつくし」くありたいものです。

 

をかし(古語)

動詞「招く(を)く(=まねく)が形容詞となったもので、ものごとを招き寄せたいと心がひかれる感じをあらわす。そこから、魅力的で美しい、おもむき深いという意味が出たという。

をかしの元はまねく。勉強になります。

 

つかいわけ 無情・非情

ともに仏教語で「有情」の対語。「無情」は、温かさや同情する気持ちがないこと。「試合当日、無情の雨が降る」。「非情」は、すべての人間らしい感情と縁がないこと。「非情のおきて」。

仏教語にも詳しい。

 

つかいわけ 思う・考える

「思う」は、胸の中で単純な、一つの希望・意志・判断をもつ。「数学は難しいと思う」。「考える」は、あれこれと比較したうえで結論を出す。「数学の問題を考える」。

つかいわけ ~にくい・~がたい ほか

「~にくい」は、できることはできるが、すらすらとうまくいかないようす。「書きにくいペン」。「~がたい」は、しようと思っても最初からとうていできないようす。文語的な表現。「信じがたい事実」。「~づらい」は、それをすると不快になるようす。「聞きづらい悪口」「はきづらい靴」。「~ぐるしい」は、「見ぐるしい」「聞きぐるしい」など、使いかたが限られている。 

よくわかりました。

 

まとめ

編者の大野先生は、広辞苑の初版で日本語の基礎語約千語の語釈と用例を書き、岩波書店の「日本古典文学大系」で萬葉集と日本書紀の校注をし、岩波古語辞典をつくった国語学者*1 です。

これらの経験による豊かな学識と深い考察が、この辞書に存分に反映されています。

また大野先生は、こういった業績の後に60歳になってから日本語のタミル語起源説を唱え、学会やマスコミの批判にさらされました。

角川必携国語辞典はこの後に「大野晋」の名前を冠してつくった国語辞典です。全編一語一語に相当な力を入れているのではないでしょうか。

そして大野先生は岩波古語辞典の序文に、「辞書は一語一語の出生、活動、老化、死という語の生涯の記録を読み取る場でなければならない」と書いています。

この考えを現代語の辞書に結実させたのが、角川必携国語辞典なのではないかと思います。 

 

とすると、大野晋先生亡きいま、全面改訂は難しいのでしょうね。

版元の角川学芸出版さんには、改訂はできなくとも増刷のたびに固有名詞に手を入れて改版してもらい、末永く発行を続けていただくことを願っています。

以上、私の考える角川必携国語辞典の魅力の紹介でした。

 

>>>角川必携国語辞典のチェックはこちら!!

 

関連エントリー:

*1:『孤高 国語学者大野晋の生涯』(川村二郎)より