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愛好家や作家が評価する国語辞典のおすすめ9選 ▶

高校生向け国語辞典【2026年】おすすめ5種の徹底比較

各種の国語辞典の中から高校生の学習に向く辞書を選び、おすすめを考えます。

基準は、現在高校生の息子に使ってほしい国語辞典はどれか?です。

候補は最新版の発売が新しい順に、この5種です。

この5種にはまえがきや編者のことばに「学習用の国語辞典」「高等学校国語教科書への対応」などの文言があり、各社が「高校生の学習」を主な編集方針に入れて作っていることがわかります。

共通する主な特徴は、高校の国語で習う古語や作家名・作品名があったり、漢字の筆順が載っていたりすることです。

注)『三省堂現代新国語辞典』と『学研現代新国語辞典』には作家名・作品名がなく、『新選国語辞典』には漢字の筆順がありません。

国語辞典で人気のある『新明解国語辞典』『岩波国語辞典』『三省堂国語辞典』『明鏡国語辞典』には、古語も作家名も作品名も漢字の筆順も、ありません。

高校生や中学生がせっかく国語辞典を引くなら、さまざまな分野の知らない言葉との出会いを楽しめた方がいいのでは、というのが当ブログの考えです。

それでは以下から、各国語辞典の特徴を比較していきます。

主に社会人におすすめの国語辞典は、以下の記事で紹介しています。

※本記事のリンクには広告が含まれる場合があります。

目次
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高校生向けの国語辞典に共通する特徴

まずはこの5種に共通する、高校生の学習用の国語辞典としての特徴を整理します。

基本的な古語を収録

古語の「あはれ」や「をかし」などです。

高校の国語に古文があることへの対応です。

ふと古語が気になったとき、古語辞典が手元になくても国語辞典でさっとわかれば便利です。

また古語が現代語と並ぶことで、同じ言葉の意味の違いや変遷を知ることもできます。

文学史上の作家名や作品名を収録

「紫式部」や「源氏物語」、「夏目漱石」や「こころ」などです。

辞書を引きながらふと出会う作家や作品に興味を持ち、知識や読書の幅を広げることができます。

注)『学研現代新国語辞典』には作家名と作品名がなく、『三省堂現代新国語辞典』は作家名と古典以外の作品名がありません。

漢字の筆順の記載

きれいな字を書くためには、正しい筆順の情報が役立ちます。

高校のテストや大学の入試には国語以外にも記述式の問題や小論文がありますので、字がきれいなことはそれだけで採点者に好印象を与えて有利です。

これは実際に、前職の学校法人で入試の採点をして経験しているところです。

国語辞典で筆順までわかれば、漢和辞典を引かずに済んで便利です。

注)『新選国語辞典』には漢字の筆順がありません。

これらの特徴をすべて満たすのは?

これらの特徴(古語・作家名・作品名・漢字の筆順)がどの国語辞典にあるかをまとめます。

スクロールできます
旺文社三省堂
現代新
新選学研
現代新
角川
必携
古語◯◯◯◯◯
作家名◯✕◯✕◯
作品名◯✕※◯✕◯
漢字の筆順◯◯✕◯◯
※古典のみ

古語・作家名・作品名・漢字の筆順がすべてそろうのは、『旺文社国語辞典』と『角川必携国語辞典』です。

注)作家名と作品名について『旺文社国語辞典』と『角川必携国語辞典』は外国の文学まで、『新選国語辞典』は日本文学のみです。

高校生が国語辞典を選ぶときの注意点

上であげた特徴の古語・作家名・作品名・漢字の筆順は、国語辞典で人気のある『新明解国語辞典』『岩波国語辞典』『三省堂国語辞典』『明鏡国語辞典』には、実は一つもありません。

この点を理解して選ばないと、例えば「日本で一番売れている新明解国語辞典を買ったのに、文学史に出てくる作家も作品も、歴史上の人物もない!」となりかねません。

この点をわかった上で、目的を持ってこれらの国語辞典を選ぶのなら、それもいいでしょう。

※『新明解国語辞典』『岩波国語辞典』『三省堂国語辞典』『明鏡国語辞典』など、主に社会人におすすめの国語辞典は以下の記事で紹介しています。

各国語辞典の特徴

以下から、各国語辞典の特徴を見ていきます。

旺文社国語辞典 第十二版

出版社旺文社
定価3,410円(税込)
初版1960年
最新版2023年10月
前の版2013年10月
版数12
総収録語数85,000
総ページ数1,752(本文1,744)
厚さ47mm
重さ861g
古語あり
作家名あり
作品名あり
漢字の筆順あり
コラム使い分け、ちがい、故事、語源、はじまり、類語、変遷、敬語、表現
巻頭付録国語年表
巻末付録国語表記の基準(現代仮名遣い、送り仮名の付け方、区切り記号の用い方、繰り返し符号の用い方、外来語の表記について、ローマ字のつづり方)、国文法要覧(品詞分類表、活用表など)、人名用漢字一覧、常用漢字「付表」、字体について、季語集、手紙の書き方、世界文化史年表、数量呼称一覧、和歌・俳句索引、画引き漢字・難読語一覧、度量衡表、方位・時刻表、干支順位表、アルファベット略語・略号集
アプリ版購入者特典で独自アプリ使用可、物書堂、DONGRI、LogoVista
別バージョン小型版
参照公式サイト(特集ページ)

1960年の初版発行から、60年以上も改訂を続けてくれている国語辞典です。

また、うれしいのは全面的な改訂ではなくても「重版」で細かい手直しをすることで、これまでも第十一版の2020年の重版で「令和」を立項したり「天皇誕生日」の日付を最新したりしてくれました。

収録項目数は約85,000と小型国語辞典の中では多い方で、分野も古語・固有名詞(人名・地名、作品名、歴史項目)・和歌・俳句などと幅広いのが特徴です。

特設記事(コラム)と巻末付録も豊富で、特に巻末付録の「和歌・俳句索引」は他の国語辞典には見当たりません。

内容で他にない特徴は、語釈に「中心義」や「変遷」があることです。

「中心義」の例はこちら。

「愛」:自分の大事にしているものが無事であるよう自分を犠牲にしてまでも守ろうとする思い
「力」:外敵にうち勝ち、心や体のはたらきを支え、活発な動きを続けさせる源
「強い」:外からどんな力が及んでも屈せず、それに打ち勝つ力がある

「変遷」の例はこちら。

「すごい」:古語「すごし」は本来、物事の程度がはなはだしく普通でないさま、心に衝撃を与えるほどのぞっとするような感じを表した。それゆえ、③(非常にすぐれている)のようによい意にも、①(恐ろしい 気味が悪い)のように悪い意にも用いられるようになった。現代語では、受けた衝撃の強烈さを感覚的に表現する用い方が多い。

ともに言葉の理解が深まる内容です。

これらのコラムや付録の充実は、『英単語ターゲット1900』などを持ち学習参考書に強い旺文社の特色がよく表れていると思います。

少し残念なのはあっさりしすぎに感じる語釈があることで、一例としてこの記事の後半で紹介する「悟性」の語釈の比較では、他の国語辞典が勝っているようです。

三省堂現代新国語辞典 第七版

出版社三省堂
定価3,300円(税込)
初版1998年(前身の三省堂現代国語辞典は1988年初版)
最新版2023年10月
前の版2018年10月
版数7
総収録語数78,500
総ページ数1,792
厚さ42mm
重さ795g
古語あり
作家名なし
作品名古典のみ
漢字の筆順あり
コラム比較、ことばの世界
巻末付録敬語の概要、手紙の書き方、季語一覧、同表記異読み異義語、難読語一覧、現代仮名遣い、送り仮名の付け方、ローマ字のつづり方、常用漢字の字体について、活用表、欧文略語集
アプリ版購入者特典で独自Webアプリ使用可、物書堂、DONGRI、LogoVista
参照公式サイト

約4年に1回ペースの、短期間での改訂を続けている国語辞典です。

この特徴を生かし、新語や新語義を積極的に採録しています。

前回第六版の改訂時に「沼」や「草」の新しい使い方を収録し、辞書マニアのながさわさんのこの記事が話題となりました。

最新の第七版の改訂でも「俗っぽい言葉」まで目を配ったと、毎日ことばさんの記事で触れています。

ざっと目を通しただけでも、「とりま」や「脳筋」という言葉まであって驚きました。

しかし『三省堂現代新国語辞典』の実力は、新語や俗語に強いことだけではありません。

今回の第七版では、用例が文学作品から採られている!

「棹さす」情に棹させば流される。[夏目漱石・草枕]
「下人」一人の下人が、羅生門の下で雨やみを待っていた。[芥川龍之介・羅生門]
「告げる」樹間を渡る冷風はすでに暁の近きを告げていた。[中島敦・山月記]
「真向き」するとKも留まりました。私はその時やっとKの顔を真向きに見ることができたのです。[夏目漱石・こころ]

草枕! 羅生門! 山月記! こころ!

私自身が30年以上前の高校時代に読んで今も心に残る名作の文章に、ここでまた出会えるとは。

また、こんな哲学の言葉も載っています。

「脱構築」(デリダ)
「アンガージュマン」(サルトル)
「言語の専制」(ウィトゲンシュタイン)
「人間は考える葦である」(パスカル)
「我思う、ゆえに我あり」(デカルト)

これらの点が、出版社の三省堂が強調する「高校教科書密着型辞典」たる特徴なのでしょう。

また、類義語の比較のコラムもなかなか充実しています。

残念なのは、「夏目漱石」や「こころ」など第六版にはあった作家名と近代の作品名が第七版でなくなったことです。

作家と作品を硬派に紹介する内容が好きだったので、チャンスがあれば復活を期待します。

新選国語辞典 第十版

出版社小学館
定価3,300円(税込)
初版1959年
最新版2022年2月
前の版2011年1月
版数10
総収録語数93,910
総ページ数1,648
厚さ44mm(ワイド版)
重さ732g(ワイド版)
古語あり
作家名あり(日本文学のみ)
作品名あり(日本文学のみ)
漢字の筆順なし
コラムなし
巻頭付録送り仮名の付け方、現代仮名遣い、かなづかい対照表、外来語の表記、ローマ字のつづり方、区切り符号の使い方、品詞分類、語の活用、敬語の種類と使い方、日本語のアクセントとその示し方、季語一覧、文化史年表、日本の旧国名、漢字部首名称、漢字一覧、この辞書に収録した語の内訳
巻末付録送り仮名の付け方、現代仮名遣い、かなづかい対照表、外来語の表記、ローマ字のつづり方、区切り符号の使い方、品詞分類、語の活用、敬語の種類と使い方、日本語のアクセントとその示し方、季語一覧、文化史年表、日本の旧国名、漢字部首名称、漢字一覧、この辞書に収録した語の内訳
アプリ版物書堂、DONGRI
別バージョン『通常版』が他社の小型版の大きさ
参照公式特設サイト

今回比較する5種の中で、1959年初版と最も歴史のある国語辞典です。

版元が同じ小学館の小型国語辞典の『現代国語例解辞典』には古語も作家名も作品名もないので、『新選国語辞典』の方がより高校生の学習に向いているという理解でいいと思います。

手にしてまず感じるのは、パールに輝く表紙など装丁の美しさです。

比べて申し訳ないのですが、『三省堂現代新国語辞典』と比較するとその差は歴然です。

内容面では今回の比較で他とはっきり違う特徴は、見出し語の表記です。

書体を和語、漢語、外来語で分けていて、アクセントの表記もあります。

(ニュースリリースより)

上の例では「カプサイシン」は「サ」の次から下がることを示しています。

さらに図版の数が圧倒的に多いことを、このLakka26さんの調査で知りました!

その他に見逃せない点は、巻末に「この辞書に収録した語の内訳」のデータがあることです。

総語数93,910語の内訳(一般語、固有名詞、古語など)や、一般語の語種別分類(和語、漢語、外来語、混種語)が数値でわかります。

また本文中に特設記事やコラムはないのですが、「参考」の情報はなかなか読み応えがあります。

一例に「介護」の参考欄がこちら。

[参考]「看護」は専門的な知識を持ち、医師の指導を受けられる人によるものとされる。「介護」も一定の知識を必要とするが、医師や看護師の指導は含まれない。一般の家庭の中でも実施が可能である。「介助」は、かつては家族によるものが中心と考えられたが、今は地域社会や介護福祉士の助言を受けることが望まれる。

「介護」「看護」「介助」の違いの説明があり、主要な国語辞典の中で一番だと評価しています。

そんな魅力にあふれる『新選国語辞典』ですが、辞書ファンとして残念なのは、国語辞典研究家のながさわさんが2021年の著書『比べて愉しい国語辞典 ディープな読み方』で指摘した「若竹煮」問題です。

「若竹煮」は「ワカメとタケノコの煮物」なのに『新選国語辞典』では「竹の煮物」になってしまう問題が、2022年の最新版でもそのままのようです。

『新選国語辞典』はワイド版が一般的な国語辞典の大きさで、通常版が小型版の大きさです。

学研現代新国語辞典 改訂第六版

出版社学研
定価3,300円(税込)
初版1994年
最新版2017年12月
前の版2012年12月
版数6
総収録語数77,000
総ページ数1,824
厚さ46mm
重さ822g
古語あり
作家名なし
作品名なし
漢字の筆順あり
コラム類語と表現、使い分け、類義語の使い分け、日本語、評論文キーワード、小論文のツボ
巻末付録現代日本語の文法、活用表、国語表記の基準(現代仮名遣いなど)、常用漢字小辞典、古語小辞典、ローマ字のつづり方、時刻・方位・干支、二十四節気・雑節・月の異称・月齢表、主要季語一覧、アルファベット略語集、旧国名・都道府県名対照地図
アプリ版なし
別バージョン小型版
参照公式サイト(特集ページ)

「評論文キーワード」「少論文のツボ」「日本語」など、参考書的なコラムが豊富です。

「評論文キーワード」には「情報化社会」「ジェンダー」「生命倫理」「他者」など、国語の評論文の主題で出てくるような言葉についてポイントの解説があります。

例えば「ジェンダー」の解説はこちら。

 「ジェンダー」とは、文化的・社会的な性差のことであり、生物学的な性差の「セックス(性)」と対をなす概念である。
 例えば、「青は男の子の色」「赤は男の子の色」、「男性は外の仕事」「女性は家事」といった認識による性差がジェンダーである。
 これらは、生物としての性差から来たものもあるが、ほとんどは歴史的に形成されたものである。そして、このことで女性の参政権がないとか男女の雇用機会や待遇が均等でないなどといった様々な性差別が起きてきた。
 こうした人為的につくられた性差を特に「ジェンダーギャップ」と呼ぶ。また、そうした性差から開放される意味として「ジェンダーフリー」がある。

「他者」の解説はこちら。

 「他者」とは、自分以外の人である。特に自分と異なる立場や価値観、考え方をする人や人々などを指す。一般に、論文では「他人」ではなく「他者」が用いられる。
[論点] 自分(自己)のアイデンティティー形成や維持は、他者との関係によって大きく左右される。他者と接することによって自分と他者の違いを知り、自分がどんな存在であるかわかるからである。
 他者による評価・承認は「私」がここに生きている証にもなる。おしゃれ、勉強、スポーツ、労働、恋愛などどいった、人間の行う多くの活動の根底には、他者の視線を意識し、他者に認められたいという願望が潜んでいるからである。

読み応えのある内容で、今回いくつか「評論文キーワード」を読んでみて私自身がとても勉強になりました。

また「小論文のツボ」には「演繹法」「帰納法」や「序論・本論・結論」の解説などがあり、論文の書き方のコツを学べます。

注意したいのは固有名詞を収録していないことで、作家名・作品名だけでなく、国名(イスラエルなど)や地域名(パレスチナなど)もありません。

角川必携国語辞典

出版社角川
定価2,860円
初版1995年(=最新版)
総収録語数52,000
総ページ数1,512
厚さ44mm
重さ837g
古語あり
作家名あり
作品名あり
漢字の筆順あり
コラムつかいわけ
巻末付録方位・時刻表、月齢表、活用表
アプリ版なし
参照公式サイト

作家の井上ひさしさんが『角川必携国語辞典』をおすすめしているのを本で読んだのがきっかけで購入してから、辞書のおもしろさを知り複数集めるきっかけをくれた国語辞典です。

「自由」の語釈の一文に「ただし、人間には絶対的な自由はない」とあり、衝撃を受けました。

今振り返るとこれが語釈なのか判断が難しいのですが、その後どの辞書を開いてもこれ以上の衝撃には出会っていません。

内容で一番の特徴は「つかいわけ」のコラムで、似たような言葉の違いをわかりやすく解説してくれます。

一例として、「いざなう」と「さそう」のつかいわけがこちら。

「さそう」は、そうしないかと相手をうまくその気にさせる。「映画にさそう」。「いざなう」は、相手に、いざ、いざ(さあ、さあ)とはたらきかけて自分側の世界に引き込む。「音楽の世界へいざなう」。

この内容は他の国語辞典には見当たりません。

内容としては、漢字・古語・百科語の内容が融合した、広がりや奥行きのある解説が全編にあふれています。

以下は「判断」の注記です。

「判」は刀(刂)で半分ずつに切ること。「断」は斤(おの)でたち切ること。つまり、ものごとを左右にはっきりと分けて決定すること。

漢字の成り立ちから解説があって、わかりやすいですね。

また、収録語数の公称は少ないですが、解説に「見出し語は極力厳選し項目の立てかたを工夫してその倍の語数に匹敵する内容を確保した」とあり、確かに使っていて基本的な日本語で不足を感じることはありません。

逆に歴史の百科項目は一番多いようです。

残念なのは、発行から25年以上改訂がないことです。

それゆえ近年一般的になったカタカナ語には弱く、例えば「コンプライアンス」すら収録されていません。

ただし増刷の際に固有名詞を細かくメンテナンスしていて、省庁や国名などが変更されています。

巻末付録はわずか6ページのみで、これはこれで潔さを感じます。

収録項目の比較

各国語辞典が国語と社会の分野や最近の語で、どんな言葉を収録しているか比較します。

作家名・作品名

まずは国語の分野で、作家名や作品名の収録を比較してみます。

「梅崎春生」は2023年の大学入試共通テストの国語で登場した作家です。

スクロールできます
旺文社三省堂
現代新
新選学研
現代新
角川
必携
紫式部◯✕○✕◯
源氏物語◯◯○✕◯
夏目漱石◯✕○✕◯
こころ◯✕○✕◯
川端康成◯✕◯✕◯
梅崎春夫✕✕◯✕◯
大江健三郎◯✕✕✕✕
ドストエフスキー◯✕✕✕◯
カラマーゾフの兄弟◯✕✕✕◯

『角川必携国語辞典』が強く、『旺文社国語辞典』が続きます。

『新選国語辞典』は日本の作家や作品の情報は豊富ですが、海外作品はありません。

『三省堂現代新国語辞典』は最新の第七版で基本的には作家名も作品名もなくなってしまいました。

『学研現代新国語辞典』には基本的に固有名詞がありません。

今回の5種はどれも存命中の人物は載せないので、「大江健三郎」は亡くなった後に出た『旺文社国語辞典』にだけ入りました。

歴史・地名

次は社会の分野で、歴史や地名などの項目の比較です。

スクロールできます
旺文社三省堂
現代新
新選学研
現代新
角川
必携
応仁の乱◯◯✕✕◯
本能寺の変✕✕✕✕◯
徳川家康◯✕✕✕◯
江戸時代◯✕◯※✕◯
明治維新◯◯◯※◯◯
日露戦争◯✕◯✕◯
第二次世界大戦◯◯◯◯◯
フランス革命◯✕○✕◯
ナボレオン◯✕✕✕◯
アヘン戦争◯◯✕✕◯
湾岸戦争✕◯✕✕✕
イスラエル◯✕◯✕◯
パレスチナ◯✕◯✕◯
※「江戸」や「明治」の語釈の中に解説あり

ここでも『角川必携国語辞典』が強く、『旺文社国語辞典』が続きます。

また『三省堂現代新国語辞典』だけが「湾岸戦争」を立項していて、俗語以外にもニュースに出るような現代の言葉に目を配っていることがわかります。

「イスラエル」や「パレスチナ」は、高校生までが使う国語辞典には載っていてほしいなと感じるところです。

最近の言葉・俗語

最後に、最近の言葉や俗語を比較します。

スクロールできます
旺文社三省堂
現代新
新選学研
現代新
角川
必携
コンプライアンス◯◯◯◯✕
SDGs◯◯◯✕✕
脱構築✕◯◯◯✕
生成AI✕◯✕✕✕
エモい✕◯✕✕✕
草(笑いの意)✕◯✕✕✕
ドン引き✕◯◯✕✕
バズる✕◯◯✕✕
ぴえん✕◯✕✕✕
もやる✕◯✕✕✕
リア充✕◯✕✕✕
ワンチャン✕◯※✕✕
Z世代◯◯✕✕✕
※「ワン・チャンス」で立項

こちらはやはり、『三省堂現代新国語辞典』が強いですね。

「草」「バズる」「ぴえん」「もやる」「ワンチャン」があるあたりに、高校生によりそう姿勢を感じます。

『角川必携国語辞典』には「コンプライアンス」さえ載っていないのが辛いところです。

収録項目の比較のまとめ

以上の結果をこのようにまとめます。

『旺文社国語辞典』は分野が広いが、俗語の採用は消極的
『三省堂現代新国語辞典』は新語や俗語に強いが、作家名と古典以外の作品名はない
『新選国語辞典』は日本文学に強いが、海外文学と歴史の項目はない
『学研現代新国語辞典』は基本的に固有名詞がない
『角川必携国語辞典』は百科語に強いが、最近の言葉に弱い

語釈・解説を比較

さて、国語辞典の比較の最大のお楽しみは言葉の引き比べです。

今回は「悟性」「忖度」「民主主義」「敷居が高い」「源氏物語」を比較します。

「悟性」

息子が高校入試の過去問を解いていて、「悟性」という言葉の意味が分からずつまづきました。

私もよく分からなかったので、各国語辞典を引きました。

旺文社国語辞典

[哲]物事を判断し理解する能力。

三省堂現代新国語辞典

[哲学で]合理的に思考・推論する能力。(参考)ドイツのカントの哲学では、感性と理性の間に位置する対象構成能力。

新選国語辞典

[哲]物事を判断し、考える能力。思考力。知性。↔感性・理性。

学研現代新国語辞典

論理的に物事を考える能力。特に、哲学で感性や理性と区別される論理的な思考の働き。

角川必携国語辞典

ものごとを論理的に考え判断する心のはたらきや能力。(類)理性 ▷哲学用語

比べるとわかりやすいのは、『学研現代新国語辞典』ではないでしょうか。

『三省堂現代新国語辞典』にはカントが登場し、「高校教科書教科書密着型」の特徴が伺えます。

『旺文社国語辞典』は全体的にいくつかあっさりした語釈がある印象で、「悟性」の語釈では理性との関係などの情報がなく残念です。

「忖度」

政治のニュースで話題になった「忖度」も引いてみましょう。

旺文社国語辞典

他人の気持ちをおしはかること。推察。また、俗に上位者の意向に沿うように行動すること。

三省堂現代新国語辞典

①ひとの気持ちをおしはかること。「彼の心中を―すると気の毒でならない」(類)察する ②相手が望んでいると思われることに気を回すこと。また、そうして、言われる前にそれを行うこと。「大臣への、官僚による―」[②は、①をして何をするかというところまでが意味に含まれたもの]

新選国語辞典

[文章語](「忖」も「度」も、おしはかるの意)他人の心の中をおしはかること。推察。「意向を―する」(参考)上位者の意向に沿って便宜を図る意味に使うのは近年の用法。

学研現代新国語辞典

[文]他人の心の中を推し量ること。(コロ)「心中を―する」(注意)「すんたく」は誤読

角川必携国語辞典

人の気持ちや考えをおしはかること。察すること。「彼の気持ちは―しかねる」(類)推量・推察

比較すると、『三省堂現代新国語辞典』の語釈が充実しています。

新語や俗語に強いだけでなく、最近のニュースで取り上げられた言葉にも強いという特徴がわかります。

「民主主義」

高校生でも18歳になったら選挙に行けますので、「民主主義」の語釈を比べてみます。

旺文社国語辞典

[社]人民が主権をもち、広く人民全体の利益・幸福のために自ら権力を行使して政治を行い社会を築こうとする立場、及びその政治形態。デモクラシー。

三省堂現代新国語辞典

[名]国民主権のもとで、国民全体のために〈選挙された代表者が〉政治を行う体制。民主政治。民主制。デモクラシー。「議会制―・自由―」(対)[現代の]権威主義

新選国語辞典

①主権が人民に属し、人民によって人民のために政治をおこなう主義。デモクラシー。②自由平等の原理に基づく主義。

学研現代新国語辞典

人民が主権を持ち、人民の手で、人民のために政治を行う主義。デモクラシー。[参考]人間の自由や平等を尊重する思想という意味で、広く使われている。

評論文キーワード 民主主義
「民主主義」とは、人民が主権をもち、人民の手で、人民のために政治を行う体制や考え方をいう。
 現代の民主主義の抱える問題点として、「多数決=数」をすべてだとして少数派を顧みない姿勢があげられる。
 多数決で物事を決めることが民主主義だと思う人は多いが、本来は国民によって選ばれた議員が議会で話し合い、多くの意見を調整した上で政策を決定するものである。多数決は、その調整が話し合いでは不可能なときにやむを得ず行われる手段に過ぎないのである。「民主主義」とは、人民が主権をもち、人民の手で、人民のために政治を行う体制や考え方をいう。
 現代の民主主義の抱える問題点として、「多数決=数」をすべてだとして少数派を顧みない姿勢があげられる。
 多数決で物事を決めることが民主主義だと思う人は多いが、本来は国民によって選ばれた議員が議会で話し合い、多くの意見を調整した上で政策を決定するものである。多数決は、その調整が話し合いでは不可能なときにやむを得ず行われる手段に過ぎないのである。

角川必携国語辞典

国民が主権者として国民全体の利益のために政治をおこなおうとする考えかた。デモクラシー。

ここでは『学研現代新国語辞典』のコラム「評論文キーワード」に感服です。

国語辞典の枠を超えているとしても、「民主主義」について考えるきっかけをくれます。

こんな解説をいろいろと読み込めば、確かに評論文の読解の力が付きそうです。

その他では『三省堂現代新国語辞典』は対義語に「[現代の]権威主義」とあって、今の世界情勢を考える上でポイントが高いと思います。

「敷居が高い」

ふと息子に「敷居が高い」の意味を聞いてみると、少し考えて「格が高い」とのこと。

各国語辞典の説明はどうなっているかを確認します。

旺文社国語辞典

①不義理・不真面目なことをしていて、その人の家に行きにくい。「不義理を重ねて―」②《俗》格式の高さなどに気後れして、気軽に行ったりしづらい。「―店」「能楽は―」

三省堂現代新国語辞典

①相手に義理を欠いたりしていて、その人の家に行きにくい。[類]敷居をまたげない。②気軽に近づけない。「敷居の高い高級店」

新選国語辞典

不義理をしていて、その人の家に行きにくい。

学研現代新国語辞典

相手に不義理なことなどをしていて、その人の家に行きにくい。「借金をしたままで―」

角川必携国語辞典

相手に義理を欠いたり、失礼なことをしてしまったので、その家に行きにくい。

ここは参考に、中型国語辞典の『広辞苑』と『大辞林』も確認しましょう。

広辞苑(第七版 2018年)

不義理または面目ないことなどがあって、その人の家に行きにくい。また、高級だったり格が高かったり思えて、その家・店に入りにくい。敷居をまたげない。

大辞林(第四版 2019年)

不義理・不真面目なことなどがあって、その対象である人のいる家に入りにくい。〔近年「敷居の高いレストラン」などのように「高級さ・上品さにひるんで行きにくい」の意で用いることがあるが本来は誤り〕

広辞苑は「不義理」も「格が高い」も認めていて、大辞林は「格が高い」は本来は誤りとしています。

私自身は「格が高い」は誤用だと思っていたのですが、「昔は少ないなりにいろんな用法があった」ことを、毎日ことばプラスのこの記事で教えてもらいました。

さて『旺文社国語辞典』と『三省堂現代新国語辞典』は、「不義理なこと」と「格が高いこと」の両方の意味がわかります。

『新選国語辞典』『学研現代新国語辞典』『角川必携国語辞典』では、「格が高い」意味での使い方を単に誤用と理解してしまいそうです。

「源氏物語」

最後に、2024年のNHK大河ドラマで注目の「源氏物語」を比較してみましょう。

旺文社国語辞典

平安中期の物語。五四帖。紫式部作。一一世紀初頭に成立。前半は光源氏を、後半はその子薫大将を主人公に、 恋愛を中心とする宮廷生活の種々相を、「もののあわれ」の情趣で統一しながら描く。日本古典の代表的作品とされる。

三省堂現代新国語辞典

平安時代中期の物語。紫式部作。十一世紀初めに成立。五十四帖で、正続二編の構成。正編で光源氏を、続編でその子薫を主人公とし、貴族社会の理想と現実、愛と苦悩を、「もののあわれ」の情趣で描く。雄大な着想、精細な心理分析、自然と人事の融合、和歌や漢詩文を引用した繊細優美な和文体など、長編物語として日本古典文学の傑作。宇治を舞台にした最後の十帖を、「宇治十帖」という。

新選国語辞典

平安時代中期の長編物語。五十四帖。紫式部の作。栄華の頂点に登りつめた主人公光源氏の苦悩と憂愁の世界を描き、物語は光源氏没後の世界にまでおよぶ。

学研現代新国語辞典

(立項なし)

角川必携国語辞典

一一世紀初めに成立。平安時代の長編物語。五十四帖から成る。作者は紫式部で、中宮彰子に仕えた宮廷の女房。構成はふつう三部に分ける。第一部は主人公光源氏がなき母の面影を求めて恋愛遍歴を重ねるようすを中心に、栄華をきわめるまでをえがく。第二部では一転して、男女の三角関係がもたらす苦悩の種々相をえがいて、源氏の死を暗示して終わる。第三部では宇治を舞台に(特に「宇治十帖」と呼ばれる)、源氏ゆかりの貴公子、匂宮と薫にかかわり、その板挟みになった浮舟の心理を細かく描写し、男と女のあいだには本質的にくいちがいがあるばかりだとして物語は終わる。文学史上では、伝奇物語・歌物語・女流日記などの仮名文学の集大成、日本の代表的な古典として構成に膨大な影響をおよぼした。

『角川必携国語辞典』のなんと詳しいことよ!

さらに『角川必携国語辞典』には源氏物語巻名一覧の表まであって驚きました。

次に詳しいのは『三省堂現代新国語辞典』で、ここにも「高校教科書密着型」の特徴が出ているように感じます。

巻末付録の比較

学習用の国語辞典には、敬語の解説や手紙の書き方など巻末の付録が豊富なものがあります。

特徴的なものを比較します。

スクロールできます
旺文社三省堂
現代新
新選学研
現代新
角川
必携
敬語の解説✕◯◯✕✕
手紙の書き方◯◯✕✕✕
文化史年表◯✕◯✕✕
季語一覧◯◯◯◯✕
和歌俳句索引◯✕✕✕✕
欧文略語集◯◯✕◯✕

最も充実しているのは『旺文社国語辞典』ですが、比べてみると敬語の解説がないのは意外でした。

スマホのアプリで引けるのは?

最後の比較として、スマホでも引けるのはどれかを確認しておきます。

この5種でスマホのアプリで引けるのは、『旺文社国語辞典』『三省堂現代新国語辞典』『新選国語辞典』です(2026年4月現在)。

ともに、iPhone・iPad・Mac専用の「物書堂」と、iPhoneでもAndroidでも使える「DONGRI」の中にあります。

また、『旺文社国語辞典』『三省堂現代新国語辞典』は「LogoVista」からも発売されています。

もし親も子もiPhoneユーザーなら、物書堂のアプリで買ってファミリー共有して一緒に楽しむのもおすすめです。

また『旺文社国語辞典』と『三省堂現代新国語辞典』は書籍版を買うと、それぞれの出版社の独自アプリで使うこともできます。

(参考)辞典協会のおススメ辞典

岩波書店・三省堂・大修館書店など、辞書の大手出版社でつくる「辞典協会」が、書店の辞書コーナー向けに「おススメ辞典」というPOP(拡材パック)を作成しています。

その中の、高校生向けの国語辞典のおすすめはこちらです。

当ブログではこのうち、『岩波国語辞典』『新明解国語辞典』『明鏡国語辞典』は、古語も作家名も作品名も漢字の筆順もないため選外にしています。

また意外なのは、三省堂のおすすめが『新明解国語辞典』なことです。

唯一の高校教科書密着型辞典という『三省堂現代新国語辞典』でなく、わかりやすい語釈が売りの『三省堂国語辞典』でもない。

『新明解国語辞典』の「日本で一番売れている国語辞典!」というキャッチコピーを死守するための、営業上の選定でしょうか。

なんだかんだ言っても高校入学時に新しい国語辞典を買って、それ以降は買わない人が多数派なのでしょう。

また、『ベネッセ表現読解国語辞典』は他の辞書と編集方針が全く違うので注意したいところです。

大学受験の文章読解や小論文対策に力を発揮する一方、日常生活に実用的な辞書ではありません。

高校生向けの国語辞典のどれを選ぶ?

これらの情報から、高校生の息子に推す国語辞典を考えます。

まず2023年版までの比較では、最新の日本語に強い『三省堂現代新国語辞典』には古語がないことで、現代文だけでなく古文、短歌・俳句、文学、歴史など幅広い分野の学習に役立つ『旺文社国語辞典』を推しにしました。

その『三省堂現代新国語辞典』は最新の第七版で古語が入りましたが、これまではあった作家名や近代の文学作品名が削除になり、夏目漱石もカフカもドストエフスキーもなくなってしまいました。

ではやはり、『旺文社国語辞典』かというところですが…。

今回の比較で、『新選国語辞典』は他と比べて圧倒的に図表が多いことを知り、日本文学に詳しいこともわかりました。

また『学研現代新国語辞典』は、語釈のわかりやすさや「評論文キーワード」の充実をあらためて確認しました。

『角川必携国語辞典』は百科語の豊富さと詳しさは群を抜いていますが、「コンプライアンス」もないことから、今の高校生が一番に引く国語辞典としてのおすすめは難しいところです。

※それでも私は今回の比較で「エモい」を探して「エマーソン」、「悟性」を探して「御成敗式目」をつい読んでしまった『角川必携国語辞典』が好きです。

そこで結論は、『旺文社国語辞典』『三省堂現代新国語辞典』『新選国語辞典』『学研現代新国語辞典』の特徴を簡単に息子に説明して、使ってみたい辞書を選ばせることにします。

各国語辞典の推しはこんな感じです。

『旺文社国語辞典』…文学から歴史まで分野が広い
『三省堂現代新国語辞典』…ニュースから俗語まで現代の言葉に強い
『新選国語辞典』…日本文学に詳しくてアクセントもわかる
『学研現代新国語辞典』…評論文キーワードなどのコラムが勉強になる

息子が魅力を感じるのは「エモい」「ぴえん」「リア充」がある『三省堂現代新国語辞典』になる気がしますが、国語辞典はおもしろいと感じてくれるきっかけになったら、それでいいと考えています。

以上、高校生向けの国語辞典を比較しておすすめを考察する情報でした。

参考情報

・WEBサイト
「毎日ことばplus」(毎日新聞校閲センター)
「四次元ことばブログ」(ながさわさん)
「note 西練馬さん」
「note 辞書尚友さん」

・書籍
『学校では教えてくれない! 国語辞典の遊び方』(サンキュータツオさん)
『比べて愉しい 国語辞書 ディープな読み方』(ながさわさん)

(主な改訂履歴)
・2026/4/29 2026年版に更新
・2020/3/12 公開

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