辞書好きの親がユーザーの視点から、わが子に使ってほしい辞書を選びます。
学校の成績も大切ですが、将来英語で世界中の人とコミュニケーションをとり、人生を豊かにできるものはどれなのか。
結論を先にまとめると、候補は2021年度スタートの中学校新学習指導要領に対応するこの4種です(発売が新しい順)。
中でも2024年のおすすめNo.1は、「ジュニア・アンカー中学英和辞典」です。
スマホアプリで聞ける音声データ、5級から2級までの英検対応、英文法の解説、小学英語の復習ページなど、全方位にスキがない辞書です。
和英辞典と一緒になった「英和・和英辞典」も、おすすめはジュニア・アンカーです。
それでは以下から、中学生向け英和辞典の選び方とおすすめの情報をまとめます。
中学生向け英和辞典の選び方
まずは中学生向けの英和辞典の選び方を考えます。
収録項目数
2024年現在、学習者向けの英和辞典には収録項目数別に主に6つのレベルがあります。
各レベルの対象は、各出版社の情報をまとめると次の通りです。
- 1万未満:小学生
- 1~2万:中学生
- 2~3万:中学生上級~高校生初級
- 5万前後:中学生上級~一般
- 7万前後:高校生中級~一般
- 10万前後:高校生上級~一般
ここで中学生の英和辞典を選ぶときにまず注意したいのは、「大は小を兼ねない」こと。
中学一年生が英和辞典の人気No.1だからといって約10万項目の「ジーニアス英和辞典」を使っても、情報量が多すぎて使いにくいでしょう。
また同じ中学生向けでも、1~2万項目と5万項目前後の英和辞典では紙面が大きく違います。
以下は17,100項目の「ジュニア・アンカー中学英和辞典」の紙面。
以下は同じ学研で54,000項目の「ニューヴィクトリーアンカー英和辞典」の紙面です。
比べると、中学入学時に買う最初の一冊には「ジュニア・アンカー中学英和辞典」などの1~2万項目の英和辞典がいいと感じます。
情報量や基本的で重要な内容のわかりやすさが、小学校での勉強からのステップアップにちょうどいい印象です。
「ニューヴィクトリーアンカー英和辞典」「エースクラウン英和辞典」「ベーシックジーニアス英和辞典」といった5万項目前後の英和辞典も、店頭では中学生用となっていることがありますが、主に授業の進行が早い中高一貫校向けでしょう。
息子の通う公立中学の推奨も、「ジュニア・アンカー中学英和辞典」でした。
中学校新学習指導要領への対応
2021年度に中学校新学習指導要領がスタートしました。
英語は「聞く」「読む」「書く」「話す」の4技能の強化を目指し、内容がレベルアッブします。
特別の理由がなければ、中学校新学習指導要領に対応する以下の辞書から、紙面が見やすく重要な内容がわかりやすいと感じるものを選べばいいでしょう。
さて以下から、1~2万項目の英和辞典の5種を紹介します。
紙面の写真は各出版社のホームページや大手通販サイトに掲載のある情報から、特長がわかりやすい2~3ページを選んでいます。
並びは最新版の出版日が新しい順です。
各辞書の特徴と紙面
ジュニアクラウン中学英和辞典
「ジュニアクラウン中学英和辞典」の特徴と紙面です。
- 出版社:三省堂
- 初版:1959年
- 最新版:2021年12月
- 版数:14
- 定価:1,980円(税込)
- 収録項目数:約17,000
- 総ページ数:832(A~Zまで789、カラー口絵17)
- 色数:4色刷
- 大きさ(タテ ヨコ 厚さ):186×134×25mm
- 重さ:494g
- 付録資料:発音のしかた(母音・子音 口と舌のイラストつき)、品詞、数を表す表現、英語でよく使われる句読点など、長さや重さなどを表す表現、不規則動詞変化表、形容詞・副詞変化表
- 音声データ:Webで見出し語の音声が聴ける
- 英検対応:なし
- その他:小学校教科書と中学教科書に多く出てくる語に「小」「中」のマークあり、CEFR-J(ヨーロッパ言語共通参照枠の日本版)のA1,A2のマークあり
(※紙面の情報は2023年2月現在ホームページ等にないため、第13版で公開されていたページの第14版の部分を紹介します)
2021年12月発売の第14版で、オールカラーになりました。
第13版より収録項目数が増え、ページ数は変わらないのに、8mm薄く、103gも軽くなり、使い勝手が格段に向上しています。
中身も、13版では最重要動詞17の解説だった「教科書エッセンスページ」が前置詞と副詞を加えた全44語になり、「チャンクで覚えよう」のコラムの追加など、大きくパワーアップしています。
特に「教科書エッセンスページ」にある動詞や前置詞のイメージ図は、暗記に頼らない実力UPに役立ちそうです。
2022年にWebサービスの「ことまな+」が始まり、本体にあるシリアルコードを入力するとWebサイトでも辞書を引くことができ、見出し語の音声も聴けます。
また、13版までデザイン違いで「通常版」と「シロクマ版」がありましたが、14版では通常版がシロクマのデザインになり一本化されました。
Challenge 中学英和辞典
「Challenge 中学英和辞典」の特徴と紙面です。
- 出版社:ベネッセ
- 初版:2020年12月(前身はチャレンジ中学英和辞典 1986年初版)
- 定価:2,100円(税込)
- 収録項目数:約18,400
- 総ページ数:864(AからZまで780、カラー口絵16)
- 色数:4色刷
- 大きさ(タテ ヨコ 厚さ):186×127×24mm
- 重さ:470g
- 付録資料:チャレンジ発音教室(母音と子音の発音のしかた)、英語で話そう(会話・手紙・スピーチなどの例文集)、単語図鑑(ピクチャーディクショナリー)、変化形の作り方、不規則動詞変化表
- 音声データ:なし
- 英検対応:なし
2021年1月に「カラー版」として新発売になりました。
前の版より用紙が薄くなってページをめくりやすくなり、辞書本体も薄く軽くなって使い勝手が向上しています。
重要な単語に特集ページ(例:上のup)があり、学ぶべきポイントが整理されていてわかりやすいです。
ジュニア・アンカー 中学英和辞典
「ジュニア・アンカー中学英和辞典」の特徴と紙面です。
- 出版社:学研
- 初版:1985年
- 最新版:2020年12月
- 版数:7
- 定価:1,980円(税込)
- 収録項目数:約17,100(内訳 見出し語約9,300、名詞の複数形,動詞・形容詞・副詞の変化形 約3,600、その他イディオム・文型など 約4,200)
- 総ページ数:936(A~Zまで826、カラー口絵40)
- 色数:4色刷
- 大きさ(タテ ヨコ 厚さ):185×128×28mm
- 重さ:557g
- 付録資料:発音記号の読み方と発音のしかた(母音・子音 口と舌のイラストつき)、英語のつづり字と発音(フォニックス方式)、やさしい英文法、英語の歌、手紙・電子メールの書き方、ローマ字一覧表、不規則動詞変化表)
- 音声データ:無料単語アプリ、無料音声アプリ(アルファベット、巻頭口絵、発音記号の読み方と発音のしかた、英語の歌)
- 英検対応:英検5~2級でよく出る単語にマークあり
- その他:デザイン違いのセシルマクビーエディションあり
2020年12月発売の第7版で本文がオールカラーになりました。
全体的にも、図やイラストが増えてより親しみやすくなった印象です。
紙質が向上し、本体が薄くなって使いやすくなっています。
音声データはアプリで聞くだけでなく、MP3のデータでダウンロードもできます。
ニューホライズン英和辞典
「ニューホライズン英和辞典」の特徴と紙面です。
- 出版社:東京書籍
- 初版:1980年
- 最新版:2020年12月
- 版数:9
- 定価:1,870円(税込)
- 収録項目数:約14,000
- 総ページ数:976(AからZまで722、口絵64)
- 色数:4色刷
- 大きさ(タテ ヨコ 厚さ):187×131×29mm
- 重さ:508g
- 付録資料:英語の発音のしかた(口と舌のイラスト付き)、Eメールライティング、句読点・符号、世界の国名、不規則動詞・助動詞の変化表、不規則形容詞・副詞変化表、和英小辞典(約12,000項目 160ページ)
- 音声データ:なし
- 英検対応:なし
- その他:しおりひも2本つき
2020年12月発売の第9版でオールカラーになりました。
ほか大きな変更は、第8版では付録にあった英文法のまとめがなくなっています。
上の写真にはありませんが、重要な動詞と前置詞のいくつかが特集ページになっています。
また巻末に和英小辞典(約12,000項目)があるのは、今回の8種でこの辞書だけです。
プログレッシブ中学英和辞典
「プログレッシブ中学英和辞典」の特徴と紙面です。
- 出版社:小学館
- 初版:2014年2月(=最新版 前身はジュニアプログレッシブ英和辞典 1997年初版)
- 定価:1,870円(税込)
- 収録項目数:約15,800
- 総ページ数:754(AからZまで679、カラー口絵16)
- 色数:2色刷
- 大きさ(タテ ヨコ 厚さ):186×136×29mm
- 重さ:470g
- 付録資料:辞書を使いこなすための文法、英語でコミュニケーション(会話表現)、見てわかる英語、英語で考え行動しよう、不規則動詞・助動詞の変化表、不規則形容詞・副詞変化表
- 音声データ:なし
- 英検対応:なし
- その他:効果的に使うための「準拠ワークシート」ダウンロード可
動詞・前置詞の最重要語の21個に、上のcomeのような特集ページがあります。
辞書大手の小学館の英和辞典ですが、2014年から改訂がないのが残念です。
サンシャイン英和辞典
「サンシャイン英和辞典」の特徴と紙面です。
- 出版社:開隆堂
- 初版:1994年
- 最新版:2012年
- 版数:3
- 定価:1,320円(税込)
- 収録項目数:約9,000
- 総ページ数:800(A~Zまで742、カラー口絵なし)
- 色数:2色刷
- 大きさ(タテ ヨコ 厚さ):186×136×25mm
- 重さ:550g
- 巻末資料:辞書引きトレーニング、発音教室、イラスト英単語コーナー、ミニ和英辞典コーナー(よく使われるカタカナ語と名詞)、動詞・助動詞不規則変化表、形容詞・副詞不規則変化表
- 音声データ:なし
- 英検対応:なし
上の「get」は見開き2ページの特集ページの右側です。
最も重要な56語を「コア56」として特集し「コアイメージ」を載せています。
巻末にカタカナ語と名詞のミニ和英辞典がついています。
特徴の比較一覧
各辞書の特徴をポイント別に比較します。
2021年度スタートの中学校新学習指導要領対応
ジュニアクラウン、Challenge、ジュニア・アンカー、ニューホライズン
オールカラー
ジュニアクラウン、Challenge、ジュニア・アンカー、ニューホライズン
英和の収録項目数が最も多い
Challenge
音声データあり
ジュニアクラウン、ジュニア・アンカー(アプリ・ダウンロード)
英文法の解説のページあり
ジュニア・アンカー
発音のしかたがわかる口や舌の構造のイラストあり
ジュニアクラウン、ジュニア・アンカー、ニューホライズン
単語に英検のマークあり
ジュニア・アンカー(2~5級)
CEFR-J(ヨーロッパ共通言語参照枠の日本版)のマークあり
初級クラウン(A1、A2)
和英小辞典あり
ニューホライズン(約12,000項目)、サンシャイン(カタカナ語と名詞のみ)
しおりひも付き
ニューホライズン
おすすめはどれ?
2021年度スタートの中学校新学習指導要領に対応しているのは、2020年12月以降に発売となった、ジュニアクラウン、Challenge、ジュニア・アンカー、ニューホライズンです。
対応の一例として、ジュニア・アンカーの付録の「やさしい英文法」に、第7版で「接続詞」と「仮定法」が入りました。
またこの4種が最新版でフルカラーでなり、使い勝手が向上しています。
よって特別な理由がなければ、この4種から選ぶべきと考えます。
中でも「ジュニア・アンカー中学英和辞典」が、スマホアプリで聞ける音声データ、5級から2級までの英検対応(第6版は準2級まで)、英文法の解説、小学英語の復習ページなど、全方位にスキがない印象です。
内容が充実した一方で、最重要語の意味の書き方や図とイラストの工夫で、より親しみやすくなっています。
本体の表紙も第7版で落ち着きました(左が第7版、右が第6版)。
女子向きにはデザイン違いの「セシルマクビーエディション」もあります。
英和・和英辞典の合本版は?
1~1.8万項目レベルの辞書には、ほぼすべてに英和和英辞典の合本版があります。
英和と和英を二つ買うよりお得で便利なようですが、その分厚く重くなるのが難点です。
それでも学校の推奨で英和・和英辞典を選ぶなら、ここでもジュニア・アンカーがおすすすめです。
英和辞典単体より薄く軽い用紙を使って、全体をコンパクトにしているのが魅力です。
ジュニア・アンカーは英和・和英辞典の合本版のみ、ディズニーエディションがあります。
またコンパクトさ重視で選ぶなら、Challenge中学英和・和英辞典に「Smart Style」、「My Design」という全体的に一回り小さな別バージョンがあり、こちらも有力です。
電子辞書は?
電子辞書で2強の「CASIO EX-word」と「SHARP Brain」から、中学生向けにも電子辞書が出ています。
しかしどちらにも、今回おすすめ候補にあげた最新の中学生向け英和辞典は入っていません。
そもそも中学生の英語の勉強に、電子辞書は向いているのか。
いろいろ調べる中で、Z会進学教室のある先生のこの意見が参考になりました。
「文法学習が一通り終わらないうちに、そして紙の辞書を使いこなせないうちに電子辞書を使うようになること」は、学習していく上で致命的なハンディキャップになりかねません。
理由は、「日本語の『意味だけを見て終わり』にする、つまり例文や発音記号、語法欄を読まない癖がついてしまう」「『必要な情報を捜し出す力』がつかず、長文読解問題が苦手になる」からです。
「紙の辞書を使って、辞書の仕組み(言い換え、語法欄や日英比較など)がわかってから(プラスになると判断したら)電子辞書を使うことにすればよい」といいます。
私の考えも同じで、中学生が最初に使う英和辞典に電子辞書はおすすめしません。
中学生向け英和辞典のまとめ
本記事のまとめです。
中学生向け英和辞典のおすすめ候補は、新学習要領対応でフルカラーのこの4種です。
中でも2024年のおすすめNo.1は、「ジュニア・アンカー中学英和辞典」です。
英和・和英辞典の合本版も、おすすめは「ジュニア・アンカー中学英和・和英辞典」です。
以上、2024年版 中学生向け英和辞典5種の徹底比較とおすすめについての情報でした。
(2024.8.14 2024年版に更新)
(2023.2.7 2023年版に更新)
(2022.1.14 ジュニアクラウンを最新版に更新)
(2021.1.8 Challenge、ジュニア・アンカー、ニューホライズンを最新版に更新)
(2020.5.3 公開)