愛用の『角川必携国語辞典』(大野晋 編)の中に、じわじわくる内容を見つけました。
「自由」の語釈です。次の通りです。
「人間として自分で責任をもって考えたり味わったりする思想と精神の働き。他から何らかの条件をつけられることがないこと。社会的には、契約を結び、財産を持ち、企業をおこし、集会や結社をもつことに何の条件もないこと。ただし、人間には絶対的な自由はない」
この国語辞典は、ベストセラーの『日本語練習帳』の作者、大野晋先生が編集しています。
大野先生、「人間には絶対的な自由はない」って?!
他の小型国語辞典を引きます。
『岩波国語辞典』『新明解国語辞典』『明鏡国語辞典』『集英社国語辞典』『新潮現代国語辞典』『新選国語辞典』『三省堂国語辞典』『ベネッセ表現読解国語辞典』に、このような語釈はありません。
中型国語辞典を引きます。
『広辞苑』に次のようにありました。
①心のままであること。思う通り。自在。古くは、勝手気ままの意に用いた。
②(freedom,liberty)責任をもって何かをすることに障害(束縛・強制など)がないこと。一定の前提条件の上で成立しており、無条件的な自由は人間にはない。(以下略)
なるほど。この②の意味ですね。
freedomやlibertyの訳としての「自由」には、無条件的な自由はない、と。
国語辞典のうち、独特で辛口な語釈といえば『新明解国語辞典』が有名だろうと思いますが、まさか『角川必携国語辞典』からこんな発見があるとは、びっくりで楽しめました。
国語辞典を読むのって、おもしろいです。
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