中学生向け国語辞典のおすすめ選びの記事では、目先の国語の成績がどうこうではなく、長い人生で役立つ読解力や表現力や知識を学べる辞書はどれなのか、という視点で、一番手に『例解新国語辞典』を選びました。

一語一語の意味や用法・用例・類語・対語などの情報量が圧倒的に豊富だからです。
一方で高校受験対策を考えると、『旺文社標準国語辞典』に次の2つの強みがあります。
古文への対策
中学で習う国語には「古文」があります。
高校入試でも、私が住む埼玉の県立高校では2020年の入試で100点中12点を配点しています。
試験の内容とベネッセや栄光ゼミナールの情報を参考にすると、高校のように古語辞典が必要なほどではなく、教科書の音読中心で大丈夫なようです。
(参考:古文・和歌|古文の理解の仕方|中学国語|定期テスト対策サイト|ベネッセ)
(参考:中学生のための【国語】勉強法|栄光ゼミナール高校受験情報)
それでも、普段から古文に親しむに越したことはありません。
『旺文社標準国語辞典』は古語約140語を本文の見出しに収録し、古文11作品の解説と冒頭文を掲載しています。
「つれづれ」と「徒然草」の例。


そして古語の説明は、兄貴分の『旺文社国語辞典』より圧倒的に豊富です。
左が『旺文社標準国語辞典』、右が『旺文社国語辞典』です。


『旺文社国語辞典』は高校生以上向けなので、古語が詳しく知りたければ古語辞典を使ってね、ということなのでしょう。
参考までに、『ベネッセ新修国語辞典』には「今昔さんぽ」というコラムがあり、古語30語と古文21作品を紹介しています。


『例解新国語辞典』には古語や古典の作品の情報がありません。
漢字一字の意味の説明がある
2020年の埼玉県公立高校の国語の入試問題に、「軌跡」に読みがなをつける問題が出ました。
この「軌」の説明を比較します。
左が『旺文社標準国語辞典』、右が『例解新国語辞典』です。



『旺文社標準国語辞典』には、『例解新国語辞典』にない「軌」一文字の意味の説明があります。
国語辞典の中で漢字を見出しに立てることついては、『岩波国語辞典』の初版の編者のことばに、「元来、日本語の中には多数の漢語が含まれている。その漢語を構成する単位としての漢字の働きを明確にする必要があると考えたからである」とあります。
この一文を読んでから、「日本がよく分かり、よく使える」(『角川必携国語辞典』の巻頭にある大野晋先生のことば)ために、国語辞典の中に漢字の説明があることの必要性と重要性を感じるようになりました。
単に「軌道」の読みを覚えるだけでなく、「軌」の3つの意味を知ることが、漢字に強くするだけでなく日本語を豊かにするように思います。
ちなみに高校入試の漢字の配点は、埼玉の県立高校の入試で国語100点のうち10点です。
また『ベネッセ新修国語辞典』も、漢字一字の意味の説明はありません。
受験とは関係ないですが、自分の名前の漢字の意味を知ると、親がどんな願いを込めて名前をつけたかわかっていいですね!
まとめ 旺文社標準国語辞典はバランスがいい
「古語・古文」と「漢字」の点で、『旺文社標準国語辞典』は中学校で学ぶ国語の全範囲に目を配り、高校受験対策に強みのあるバランスのいい辞書だとわかります。
さすが、受験参考書大手の旺文社謹製です。
そうはいっても高校入試の国語では現代文の比率が圧倒的なので、中学生入学から使う国語辞典の一番手は、『例解新国語辞典』でゆるぎないところです。
しかし、もし息子が中学3年になって受験対策で古文につまづいて、教科書や参考書でカバーできないようなら、こんな辞書もあるよと『旺文社標準国語辞典』もわたしてみようかなと思います。
いま中学3年生で、これから高校受験にむけて国語辞典を一冊買うなら、即効性を考えて『旺文社標準国語辞典』を選ぶことも有力です。
これほど古語の説明が詳しい「国語辞典」は、高校生以上向けのものにもありません。
(※参考:学研の『学研現代標準国語辞典』には巻末に古語小辞典がありますが、作家名などの固有名詞がないので学習用の辞書としては疑問です)




(2020.12.8 最新第八版の情報に更新)
(2020.5.7 公開)