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「拙速」を引いて例解新国語辞典の恐るべき実力を評価する

(2021.1.19 例解国語辞典 第十版に情報更新)

ヤフーニュースのトピックスに「米紙IOC批判『無神経の極み』 東京五輪の新日程発表“拙速”」という見出しが流れました。

スポニチのこのニュースです。

さらに新型コロナウイルス感染が来年7月に終息している保証はないとして、発表が拙速だったと主張した。

ここにある「拙速」の使い方が気になります。

「拙速」は肯定的な意味の言葉では?

そこで辞書を引いてみました。

まずは小型国語辞典のビッグ4(サンキュータツオさん命名*1)から。

・岩波国語辞典
できあがりがへたでも仕事は速いこと。⇔巧遅。「―をとうとぶ」

・明鏡国語辞典
仕上がりはまずいが、仕事がはやいこと。「―に事を運ぶ」⇔巧遅

・新明解国語辞典
まずくても出来あがりの早いこと。「―主義におちいる」⇔巧遅

・三省堂国語辞典
まずくても できあがりの早いこと。「―をたっとぶ」(⇔巧遅)

中型国語辞典も引いてみます。

・広辞苑
仕上がりはへたでも、やり方が早いこと。「兵は―をとうとぶ」「―を避ける」⇔巧遅

・大辞林
出来は悪いが仕上がりは速いこと。⇔巧遅。「―を避ける」「―主義」

これらの辞書によると、「拙速」はやはり肯定的な意味の言葉です。

スポニチの記事の見出しはよく理解できません。

ふと、『例解新国語辞典 第十版』を引いてみます。

これだけの量の解説がありました!

1.やり方は粗雑でも、すみやかに行うこと。[例]巧遅は拙速に如かず(=へたでも早くやるほうがいい)。[対]巧遅。2.じゅうぶんに準備しないで、実行をむやみに急ぐこと。[例]安全確認が不十分なうちに運転を再開するのは拙速にすぎる。[類]尚早。[注意]中国の兵法書『孫子』から出た1.が もとの意味だが、いまは ふつう2.の意味で使う。

※補足:第九版の[注意]は「1.が本来の意味だが、2.の意味で使う人が増えている」でした。また1. の用例は「拙速重視でやる」「拙速主義」でした。第10版で内容に磨きがかかっています。

はい、よーくわかりました。

スポニチの見出しは2.の「じゅうぶんに準備しないで、実行をむやみに急ぐこと」の意味で使っているのですね。

例解新国語辞典はうしろ見返しに「誤解されやすいことば、新しい言いかた」の一覧があり、「拙速」もちゃんと入っています。

他の中学生用の国語辞典である、『学研現代標準国語辞典』『旺文社標準国語辞典』『ベネッセ新修国語辞典』も、『岩波国語辞典』などと同じような語釈で、『例解新国語辞典』のような解説はありませんでした。

以上、『例解新国語辞典』の恐るべき実力を知った、という話題でした。

少なくとも中学生向けの辞書では、現代語の実力No.1です。

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