中学生向け国語辞典で当ブログおすすめNo.1の『例解新国語辞典』の特長の一つに、「囲み記事」のコラムの充実ぶりがあります。
一例として、「…ごとに」と「…おきに」の詳細な違いを解説した内容を以下の記事で紹介しました。
他にも、囲み記事は全58個あります。
この中には、日本語の奥深さを知り、日本語が好きになれるような名文がいくつもあります。
そのうちの、特に心に響いた5つを紹介します。
人は、心の中にも道をつくる
「囲み記事51 『道』の諸相」より。
しびれる名言です。
「道」ということばに6つの意味があることを、次のように説明します。
人間は、なにもないところにまず道をつくる(1)。その道は必ずどこかへ通じる(2)。だから、行きたいところへ行く旅の道すじができる(3)。人は、心の中にも道をつくる(4)。その道はそれぞれの目的にむかう(5)。そこに行きつけた人には、「ツー」といえば「カー」とわかる道ができる(6)。
この用例として、「(1)道すじ、(2)道しるべ、(3)栄光への道、(4)人の道、(5)道を開く、(6)その道の大家」などを示します。
まさしく辞書は、「ことばの書」であり、同時に「人間の書」であり、「思想の書」である*1と教えてくれます。
相手に配慮しながらことばを選んで使うように心がける気持ちは、つねに大切にしたいものである
「囲み記事6 いろいろな忌(い)み言葉(禁句・タブー)」より。
日本では昔から、縁起をかついだり人への気づかいとして、ものごとのよび名を言いかえる習慣があることの紹介です。
次のような例です。
- 数字の「四」を避け、病院で三号室の次は五号室などとなっている
- 結婚披露宴で「去る」「切る」は使わない
- 宴会や会合の「終わり」→「お開き」
- 「するめ」→「当たりめ」
- 「葦(あし)」→「よし」
SNSを中心とするデジタルとスピードの時代にこそ、相手に配慮しながらことばを使うという気持ちを、息子と一緒に大切にします。
「知」は知性、「情」は感情、「意」は意志である
「囲み記事19 『心』のはたらきを表すいろいろな表現」より。
心のはたらきをあらわすことばとして、「知情意」の説明があります。
そして、知は頭、情は胸、意志は腹にあると考え、「知のはたらき―頭がいい・頭を使う」「情のはたらき―胸がいたむ・胸をおどらせる」「意のはたらき―腹がすわっている・腹をくくる」などの言いかたができた、と教えてくれます。
心が豊かになるような知識です。
泣きと笑いは人生を代表する
「囲み記事35 『泣き』『笑い』の日本語」より。
「人生泣き笑いだ」「一銭を笑うものは一銭に泣く」など、日本語の「泣く」と「笑う」は人生の明るい面と暗い面、成功と失敗を表すことの紹介です。
人生泣くこともあれば笑うこともある、と教えてくれているかのようです。
漢字は、意外な部首をもつものがある。たとえば「輝」は、「光」偏ではなく「車」偏に入っている(中略)これは、中国の清朝のはじめに作られた『康熙字典』という辞書にしたがっているためである。
「囲み記事47 部首のふしぎ」より。
『例解新国語辞典』は国語辞典ですが…、突然漢字の話が出てきました!
この他にも「玉」偏の「現」は実際には「王」の形になっているなど、おもしろい!
国語辞典なのに、漢和辞典の世界にもいざなってくれます。
以上、『例解新国語辞典』から日本語が好きになる囲み記事の紹介でした。
中学生の学習用ですが、大人が読んでも学びが多い国語辞典です。
この4月に中学にあがる息子には、英語を学ぶことと同時に、日本語を深く学んで豊かな心を育ててほしいと願います。
(2021.1.19 最新第十版に情報更新)