2020年1月11日放送のテレビ番組「人志松本のすべらない話」で、古舘伊知郎さんが「おき(置き)」と「ごと(毎)」の違いについて話しました。
オチは、「金田一秀穂先生に聞いたら、個人差があって答えがないのが答えだった」です。
そう言われると、調べたくなるのが人情というもの。
さっそく手持ちの国語辞典を引いてみると、『三省堂現代新国語辞典』にのみ、比較の記載がありました。
次の通りです。
[置き] ある間隔で、続いて起こったり、存在したりすること。「バスは十五分 ─ にくる・一メートル ─ に木が植わっている」
[ごと①] 繰り返し起こる、そのときどき。「六時間 ─ に薬を飲む・会う人 ─ に、寄付をたのむ」
なるほど。
『三省堂現代新国語辞典』は新語の採用で特に話題となりましたが、やはりこの辞書では類義語の情報もあなどれません。

しかしこれだけでは、解釈に個人差があることはわかりません。
こんなところかなぁと、念のために中学生向け国語辞典の『例解新国語辞典』を手にとったところ…、なんと、ほぼ1ページものスペースを使って解説があります!
これは驚いた!!

以下は内容の抜粋です。
「一か月おきに病院に行く」は、「毎月」病院に行く〔一月、二月、三月、・・・〕と、「隔月」で病院に行く〔一月、三月、五月、・・・〕の、二つの意味がある。
「一か月という長さの期間がおかれる」のが、「病院に行く日」の間か、「病院に行く日を含む月」の間か、何の間かによって、二通りの意味が生じる。
同じように「一週間おきに買い物をする」でも、「毎週買い物をする」と「隔週で買い物をする」という二通りの意味にとることができる。
「一か月ごとに病院に行く」と言えば、毎月行く意味にしかならない。
「…ごとに」は、「…」が一つのまとまりを作ることを表す。
「…おきに」は、並んだものの間の間隔が「…」だ、ということを表わす。
なるほど。
このほかの事例として「三つおきに赤い椅子を置く」は、「白白白赤白白白赤白白白赤…」と「白白赤白白赤白白赤…」の両方のとらえ方ができるのではないだろうか、と説明があります。
やはり「おき」だと受け取り方に個人差が出るのですね。
詳しくは、『例解新国語辞典』のp469をぜひぜひご参照ください。
『例解新国語辞典』は、文章術本のロングセラー『理科系の作文技術』の著者の木下是雄さんが、中型の『学研国語大辞典』とともに一番よく使うと書いている辞書です(『レポートの組み立て方』より)。
この理由の一つが、よくわかるような事例になりました。
以上、「おき(置き)」と「ごと(毎)」の解説が一番詳しい国語辞典は、なんと中学生用の『例解新国語辞典』だった、という情報でした。





