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『森田療法』岩井寛著 感想:弱さを自覚し受け入れることの意味

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森田療法 岩井寛

私が森田療法に興味を持ったきっかけは、Amazonでたまたま岩井寛先生の著書『森田療法』のページに行き着き、カスタマーレビューが105件もあって、帯や商品説明のこの文言に引かれたからです。

不安や葛藤を「あるがまま」に受け入れ、すこやかな自己実現を目指す
誰もが実践できるメンタル・ヘルスのヒント!

こころに潜む不安や葛藤を“異物”として排除するのではなく、「あるがまま」に受け入れ、「目的本位」の行動をとることによって、すこやかな自己実現をめざす森田療法は、神経症からの解放のみならず、日常人のメンタル・ヘルスの実践法として有益なヒントを提供する。 

読んでみるとレビューのいくつかにある通り、この本は森田療法の解説というより岩井寛先生の自伝だ、と私も感じます。

岩井先生ご自身が、神経質的な性格であったこと、子どもを生後3日で亡くしたこと、晩年にガンを患い、左耳が聞こえなくなり、両眼が失明状態になり、下半身が全く動かなくなったことへの、森田療法の実践を語ります。

この本は病気のために口述筆記だそうですので、まさに「語り」であり「告白」です。

この「告白」が胸に迫り、森田療法への理解を深めてくれます。

岩井先生が森田療法の治療者として、「常に、自己治療、自己治癒」(p184)し、体得された人生観がいくつも出てきます。

いくつか紹介します。

不安があっても「あるがまま」でその橋を渡り、目的を果たすことを実践してきた。今はそれが”習い性”となって、積極的な人間だと人に見られることが多くなった。(p181)

人間は常に不条理な世界を生きているのだから、どの道を選んだら最善であるのか考えていただけでは永久にわかるものではないので、良いと思った目的に自分を投げ出してみる以外にない(p181)

神経症的な劣等感に悩んできた当時と異なるのは、人間の醜さや弱さを悪いものと決めつけたり、それを拒否したりしないことである。人間は誰しも美しい一面と同時に醜い一面を持ち、自身に満ちたところがあると同時に弱点があり、強さを持つと同時に弱さを持つ存在なのである。そういう人間の本質的な姿が理解できたときに、筆者は自分自身のマイナスの点を拒否しようとはしなくなった。それどころか、自分自身の醜さ、自信のなさ、弱さを自覚したときにこそ、より深い視点で他者を理解できるようになったのである。(p196)

なぜ、これほど辛い思いをしても本を書くのか、と問われれば、それは“最後まで人間として意味を求めながら生きたい”からである。何もしないで、ただ苦しさと闘いながら生きていることもできる。一方、痛みや苦しさと闘いながら口述筆記をすることもできる。つまり、その両者のどちらかを選ぶことができるのは筆者自身なのであり、それを決定するのも筆者なのである。(p203)

下線は私がつけました。この部分に一番しびれました。

よくわかる森田療法 心の自然治癒力を高める』(こころのくすりBOOKS 監修 中村敬 2018)によると、いま森田療法はガン患者の心のケアにも応用されているそうです(p106)。

岩井先生の晩年の生き様が、まさに症例なのでしょう。

医療従事者でない一社会人が森田療法に興味を持ったら、まずは2016年に出版され現在の森田療法に詳しい、北西憲二先生の『はじめての森田療法』(講談社現代新書)をおすすめします。

その上でぜひこの岩井先生の自伝のようなこの『森田療法』も、ぜひ読んでほしい一冊です。

以上、岩井寛先生の著書『森田療法』の感想でした。

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