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「どん底に大地あり」と「マイナス思考のどん底からのプラス思考」

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大河の一滴 五木寛之

タイトルの「どん底に大地あり」は、このところハマっているNHKの朝ドラ「エール」の今日の放送で、テーマになった言葉です。

史実として、長崎の原爆投下直後、本人も重症を負いながら傷病人の治療にあたった医師の永井隆先生が、「どん底に大地あり」という言葉を残しました。

ドラマの主人公の祐一(モデルは作曲家の古関裕而)は、原爆投下後の長崎で「どん底に大地あり」という言葉に触れ、そこから「希望」を見出し、 「長崎の鐘」を完成させます。

この「どん底に大地あり」という言葉に、五木寛之さんが著書の『大河の一滴』に書いた「マイナス思考のどん底からのプラス思考」という言葉を思い出しました。

こんな内容です。

本当のプラス思考とは、絶望の底の底で光を見た人間の全身での驚きである。そしてそこへ達するには、マイナス思考の極限まで降りていくことしか出発点はない。(p41)

現実にはプラス思考だけでは救われない世界があります。そして、実はプラス思考と対をなして、大きなマイナス思考という重要な世界がある。そのマイナス思考のどん底のなかからしか本当のプラス思考はつかめないというのが、私の考え方なのです。(p291)

大河の一滴』を初めて読んだのは、10年以上前の30代後半の時です。

それまで、大学新卒で入った業界中堅の会社で順調に出世してきて、希望に近い条件で転職を決め、子どもも生まれてすくすく育っていたせいか、「積極的な考え方で人生は成功する」とか、「人は幸せになるために生まれてきた」とか、プラス思考が絶対に正解だと思っていました。

そこにこの「マイナス思考のどん底のなかからしか本当のプラス思考はつかめない」という言葉は、なかなか刺激的でした。

その後40歳を過ぎ、50歳近くまで生きてくると、あの時は人生の「どん底」だったなと思い当たる過去を、いくつも思い出します。

そして、「プラス思考絶対!」より、「どん底に大地あり」や、「マイナス思考のどん底のなかからしか本当のプラス思考はつかめない」という言葉の方が、本当は人を勇気づけるのかな、と感じてきています。

永井医師をモデルとした役を「エール」で演じた吉岡秀隆さんはインタビューで、「『どん底に大地あり』は、今の世の中にも伝えたいメッセージ」と語っています。

原爆で何もかも一瞬で失った「どん底」を、戦争を知らない私が実感として語ることはできません。

それでも、過去に経験した人生の危機を振り返るときや、会社員をやめて今は将来の見通しがないことに不安になるときに、「どん底に大地あり」は希望をもらえる言葉です。

あとは、マイナス思考のどん底のなかで、本当のプラス思考をつかめるかです。

朝ドラを最近「半分、青い。」「まんぷく」「なつぞら」「スカーレット」と見てきた中でも、「エール」が先週から今週にかけて描いた戦中から戦争直後の内容は、私の中で感動No.1でした。

以上、NHKの朝ドラ「エール」から、「どん底に大地あり」という言葉の紹介でした。

\ 〈エール〉配信中 /

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