岩波国語辞典について当ブログやツイッターで書いたことが、最新の第8版でどうなっているかをまとめました。
「介護」の語釈
・第8版
高齢者・病人・障害者など日常生活に支障のある人を助けること。「老老ー」▽看護より広く、日常生活の援助、財産の管理なども含めて言う。
・第7版
身体や精神が健全でない状態にある人の行為を助ける世話。「寝たきり老人のー」(▽以下は同じ)
医療や介護分野の現代の教科書の定義を踏まえた語釈になった印象です。
毎日新聞校閲記者ブログさんの記事にある「介護用語集を買ってきて検討」の反映の一つでしょうか。
注記(▽)は変更なく、「看護」との違いを意識できます。ここが残ってうれしい。
「うんこ」
第7版で項目になかった、「うんこ」も「うんち」も立項されました!
『うんこ漢字ドリル』の影響で、単なる幼児語から格上げのようです。
日産のニュースで気になったことば
「アライアンス」なし。「ガバナンス」あり。
「コーポレートガバナンス」は「ガバナンス」の用例に入りました。
「アライアンス」はまだ「百年の日本語」ではない、ということですね。
いきる
「生き」と「息」の語源が同じとすると、よく生きるためには、よく息をすること、よい呼吸をすることが必要なのかな、と気づく。こういう学びがあることが、『角川必携国語辞典』のすごいところだと思う。
— 健伝 (@kendenblog) July 27, 2019
岩波国語辞典にも注記(▽)に「『息』と同語源」とあります。
第8版にもこの注記が残っていてうれしい。
語釈の区分
これです。
岩波国語辞典第7版では分類がない「モラトリアム」の語釈が第8版で3つに分類された。初版の序文にある「これまでの多くの辞書は一語の意味をあまりにも細かくしかも並列的に記述してきたきらいがある」を第7版の「モラトリアム」で実感し岩国を好きになった。この変更をどう考えたらいいか悩んでいる。
— 健伝 (@kendenblog) November 25, 2019
・第8版
①経済恐慌などの場合、国家が債務の履行の一定期間延長を認めること。支払猶予。②当面の実施を中止すること。「核実験ー」③比喩的に、社会人となるべき自信がなく、大学の卒業などを延ばしていること。「ー人間」
・第7版
経済恐慌などの場合、国家が債務の履行の一定期間延長を認めること。支払猶予。比喩的に、社会人となるべき自信がなく、大学の卒業などを延ばしていること。「ー人間」
辞書の冒頭にある凡例の説明2にも、「その語の現象的な意味をいちいち細かく分けて説明するよりも、基本的な意味を明らかにするようにした」とあります。
「核実験モラトリアム」を入れるための変更なのでしょうが、わかりやすくなったのか、「いちいち細かく分けて説明する」ようになったのか、もっと使い込んでから考えたいと思っています。
>>>岩波国語辞典 第8版 2019年11月22日発売。
>>>ながさわさんのレビュー。いつも詳しくてありがたいです。
>>>毎日新聞 校閲記者ブログの紹介記事
関連エントリー: