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介護と看護の違いがわかる国語辞典は? 18種の比較と評価

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新選国語辞典と岩波国語辞典と新明解国語辞典

多種多様な国語辞典を評価する一つの指標として、「介護」と「看護」の意味の違いがわかるか、主に高校生以上向け国語辞典18種を比較しました。

というのも、高齢化がすすむ日本で「介護」と「看護」の違いを知ることは、実生活で役立つと考えるからです。

例えば、家族や自分の健康に何かあったとき、必要なのは「介護」と「看護」のどちらで、病院・老人ホーム・障害者施設などのどこに行くべきなのか。

または、自宅で「在宅介護」と「在宅看護」のどちらのサービスが必要なのか。

比較した結論は、2022年2月発売の小型国語辞典の『新選国語辞典 第十版』がNo.1です。

「介護」の語釈の〔参考〕欄に「看護」と「介助」との違いの解説が入り、今の世情に通じたよくわかる内容で、百科事典的な記述にまで踏み込んでいます(語釈はこちら)。

新選国語辞典は「ワイド版」が新明解国語辞典などと同等の大きさで、「普通版」が他社の小型版に近い大きさです。

また、8種の国語辞典が「介護」と「看護」の意味の違いがわからない残念結果でした。

本記事では国語辞典18種の「介護」の語釈を紹介し、内容を評価します。

目次
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介護と看護の違いを専門の事典などから

まずは専門の事典と大手企業のサイトの情報から、「介護」と「看護」の違いを確認します。

看護・医学事典 第7版増補版(医学書院 2015)

専門の事典の解説です。

[介護]障害者や高齢者など、自立した日常生活を送ることに支障を来している人に対し、日常生活の介助や、問題行動の予防、機能訓練の援助、および輸液や褥瘡予防、吸引、在宅酸素療法や人工呼吸管理などの医療関連行為などの援助を行うこと。

[看護]一般には、病をもつ人、弱い状況(身体的・精神的・社会的)におかれた人の手当て、援助をすること。(中略)わが国では、看護は看護職の行う業務として、保健師助産師看護師法において「療養上の世話」と「診療の補助」が定められている。

パナソニックのサイト

解説がわかりやすいので紹介します。

介護は「日常生活を安全かつ快適に営むためのサポート」がメインで、介護福祉士やヘルパーなどの資格を持った福祉の専門の資格を持ったものが、看護は「病気や怪我などの治療や療養のサポート」がメインで看護師や保健師などの医療の専門の資格を持ったものがサービスを提供します。

在宅介護では点滴や服薬管理など、看護のほうがより専門性が求められる場面が多く、家族だけで対応するのは困難です。必要に応じて介護保険の訪問看護を利用しましょう。

なるほど。

看護・医学事典とパナソニックのサイトの内容をまとめると、

「介護」日常生活を送るため世話や援助
「看護」
医療の有資格による療養上の世話診療の補助

ということですね。

各国語辞典の「介護」の語釈

各国語辞典の「介護」の語釈は、以下の通りです。

小型と中型の中の並びは、出版が新しい順です。

小型辞典 13種

2022年以降に改訂があった辞書には旧版の語釈を入れています。

旺文社国語辞典 第十二版(旺文社)

病人や高齢者、障害がある人などの日常生活の世話をすること。「自宅ー」「ー施設」
[参考]「看護」は主に治療や療養を助けることをいい、「介護」は日常生活全般の世話をすることをいう。

【第十一版】病や高齢で身体の不自由な人などの看護や世話すること。「自宅ー」「ー施設」

三省堂現代新国語辞典 第七版(三省堂)

高齢者や病人などの、日常生活の世話をすること。「ー用品・ーサービス・ー休業・老老―」

【第六版】[自立できない高齢者や病人の]介抱や看護をすること。「ー用品・ーサービス・ー保険制度」

新選国語辞典 第十版(小学館)

障害があったり病気をもっていたりする人や高齢者の世話をし、家族に助言をすること。
[参考]「看護」は専門的な知識を持ち、医師の指導を受けられる人によるものとされる。「介護」も一定の知識を必要とするが、医師や看護師の指導は含まれない。一般の家庭の中でも実施が可能である。「介助」は、かつては家族によるものが中心と考えられたが、今は地域社会や介護福祉士の助言を受けることが望まれる。

【第九版】医師や看護師以外の者が病人・障害者・高齢者の世話をすること

三省堂国語辞典 第八版(三省堂)

[高齢者・障害者などの]日常生活のせわをすること。「ー保険制度」

【第七版も同じ】

明鏡国語辞典 第三版(大修館書店)

病人や心身に障害のある人に付き添って日常生活の世話をすること。「在宅ー」「ー保険制度」

新明解国語辞典 第八版(三省堂)

[←介抱看護] 病人・けが人や身体障害者、また高齢者などに医療・看護の支援を行なったり 日常生活の面倒を見たりすること。「ー保険・在宅ー・老人ー」
※「←…」は「…から来た、…の略」の意。

岩波国語辞典 第八版(岩波書店)

高齢者・病人・障害者など日常生活に支障のある人を助けること。「老老ー」 ▽看護より広く、日常生活の援助、財産の管理なども含めて言う。

学研現代新国語辞典 第六版(学研)

[自宅で療養している病人や老齢者などの]介抱や看護をすること。ケア。

現代国語例解辞典 第五版(小学館)

病人や心身に障害の人などを介抱し看護すること。「老老介護」

集英社国語辞典 第三版(集英社)

(病人・老人などの)介抱や世話・看護をすること。「ー者」

新潮現代国語辞典 第二版(新潮社)

病人などの介抱をして日常生活を助けること。「ー保険」

小学館日本語新辞典 初版(小学館)

病人など介抱したり看護したりすること。(例)自宅で高齢の母親を介護する。

角川必携国語辞典 初版(角川学芸出版)

病人や老齢者など、心身の不自由な人の看護や世話をすること。「自宅ー」

中型辞典 4種

大辞林 第四版(三省堂)

高齢者・病人などを介抱し世話をすること。「ー人」「老母をーする」

広辞苑 第七版(岩波書店)

高齢者・病人などを介抱し、日常生活を助けること。※用例なし。

大辞泉 第二版(小学館)

病人などを介抱し看護すること。「寝たきりの母をーする」

学研国語大辞典 第二版(学研)

[自宅で療養している病人や高齢者などの]介抱や看護をすること。「(ネフローゼ・小児ゼンソクナドノ病気ハ)治療が長く、経済的問題のほか、ーの人手を要するため、家庭に与える金銭、精神面の負担が大きい…<四七・一〇・三・毎日朝>」

大型辞典 1種

日本国語大辞典小学館 第二版(小学館)

(「介」はかいぞえする、たすけるの意)病人や老人を、日常生活の身体的困難などに対して補助したり看護したりすること。

「介護」の由来と意味の変遷

新明解国語辞典の説明などから、そもそも「介護」という言葉は「介抱」と「看護」の組み合わせからできたようです。

それが、老人福祉法が制定(1963)されたり、介護福祉士という国家資格ができる(1987)中で、現在は上の『看護・医学事典(医学書院)』の解説のように「看護」と区別されてきたのでしょう。

とはいえ、過去に言葉としては「介護」に「看護」の意を含んでいたしても、現在の定義に違いがあるならば、少なくとも1990年代以降の国語辞典にはその違いを反映していてほしいものです。

「介護」の語釈に「看護をすること」と書いてあったら、違いがわかりません。

評価できる辞書

新選国語辞典の最新の第十版に、「介護」と「看護」の違いのわかりやすい解説が入りました!

類義語の「介助」にも触れ、さらに「介助」は「今は地域社会や介護福祉士の助言を受けることが望まれる」という百科事典的な記述にまで踏み込み、現代の日本の生活にいきる実用的な内容なのではないでしょうか!

第九版の語釈は「医師や看護師以外の者が病人・障害者・高齢者の世話をすること」のみだったので、大幅なパワーアップです。

他には、旺文社国語辞典岩波国語辞典新明解国語辞典に工夫があります。

旺文社国語辞典は、最新の第十二版の[参考]欄で「看護」との違いの解説が加わりました。

岩波国語辞典では、現在「介護」の世話は「看護」における世話の範囲より広くなっていることがよくわかります。

また新明解国語辞典は第八版で、日常生活の面倒を見ることに加え、「医療・看護の支援」が加わりました。

「補助」でなく「支援」としているところに、介護職へのきめ細かな配慮を感じます。

ほか、三省堂現代新国語辞典三省堂国語辞典明鏡国語辞典新潮現代国語辞典広辞苑大辞林でも、看護とは違うことがわかります。

残念な辞書

学研現代新国語辞典、現代国語例解辞典、集英社国語辞典、小学館日本語新辞典、角川必携国語辞典、大辞泉、学研国語大辞典、日本国語大辞典では、「介護」と「看護」の違いがわかりません。

学研現代新国語辞典は「類義語の使い分け」という囲み記事を設けて、次の説明があります。

[介護・看護] 病人をかいがいしく介護(看護)する
[介護] 介護保険/在宅介護/介護サービス
[看護] 完全看護の大学病院/看護師/看護学

しかしながら、「在宅看護」や「訪問看護サービス」という言葉もあります。

この囲み記事の説明ではなんだかよくわかりません。

学研国語大辞典は1988年の発行ですが、介護福祉士の国家資格ができた1987年に法的には「介護」の定義が新しくされていたと思いますので、違いを書いて欲しかったところ。

日本国語大辞典は全13巻の最高権威とされる国語辞典で、「介護」がある第3巻は2001年に発行されています。

それでこの語釈とは、いかがなものでしょうか。

介護と看護の違いがわかる国語辞典の感想とまとめ

新選国語辞典第十版の編者のことばに、「ことばは、それ一つだけで変わるのではなく、その仲間のことばと一緒に変化していきます」とあります。

「介護」とその仲間のことばの変化を、新選国語辞典の解説で感じることができました。

また今回の比較の結果には、各国語辞典の個性がよく出ているように思います。

他に気づいたことをいくつか列記します。

  • 同じ岩波書店でも、小型の岩波国語辞典の方が、中型の広辞苑より詳しい。
    サンキュータツオさんが著書の『学校では教えてくれない! 国語辞典の遊び方 (角川文庫)』p72で言う通り、広辞苑は「国語辞典的百科事典」であり、「実は小型辞典の方が活きたことば、一般項目ががたくさん載っている」(同 p71)のだろう。
  • 三省堂は、新明解国語辞典、三省堂国語辞典、三省堂現代新国語辞典、大辞林の4つの語釈がみな違う。
    新明解国語辞典は最新の第八版で鋭い語釈の実力を見せてくれた。
  • 小学館では、日本国語大辞典、小学館日本語新辞典、現代国語例解辞典が同じ系列で、新選国語辞典は別物か。

以上、「介護」と「看護」の違いがわかる国語辞典No.1新選国語辞典 第十版! という情報でした。

新選国語辞典は「ワイド版」が新明解国語辞典などと同等の大きさで、「普通版」が他社の小型版に近い大きさです。

(2023.10.22 旺文社国語辞典を第十二版、三省堂現代新国語辞典を第七版に更新)
(2022.2.20 新選国語辞典を第十版に更新)
(2019.8.31 公開)

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