「角川必携国語辞典の魅力は つかいわけのコラムと 国語・百科・漢字・古語の高度な融合」の続きです。
角川必携国語辞典の他に引くことの多い国語辞典と、その目的を紹介します。
現代国語例解辞典
独特の見出しの表記が、あることばをひらがなで書こうか漢字で書こうか迷うときに頼りになります。
冒頭の「記述の要領」にこう説明があります。
例えば「あいいく」では、他の国語辞典ではたいてい見出しが「あいいく【愛育】」となっていますが、現国例*1では「【あいいく 愛育】」となっています。
これは、「あいいく」の標準的と考えられる表記が「愛育」であることを表しています。
【あいにく(生憎)】の標準表記は「あいにく」で社会的慣用度の高い表記が「生憎」であり、【あたふた】の標準表記は「あたふた」であることが、見出しを見るだけでわかります。
しかもその根拠が国立国語研究所のコーパスです。
最初はこの独特な見出しの書き方に戸惑いました。しかしこの説明を読んで理解してから、実によく考えられていると感じます。
また用例の表記が、例えば「あいにく」では「あいにくなことに持ち合わせがなくて…」とあり、他の辞書の用例なら「―なことに」と書くようなダーシを使っていません。この点も書き方の確認に便利です。
>>>参考記事「「申し込み」か「申込み」か「申込」か こんなときの頼りは現代国語例解辞典」
その他の特長に、類義語の使い分けを表にしていることがありますが、私は角川必携国語辞典や三省堂現代新国語辞典のようにことばで説明している方が好みなので、参考程度にしています。
岩波国語辞典
あることばの使い方が正しいかどうかの判断に、一番頼りにしています。
この理由の一つは、編集方針が一つ前の第七版の序文にある「この辞書が視野に収めるのは過去百年の(一時的流行ではない)言葉の群れである。それゆえごく最近の新語・俗用にはかなり保守的な態度となる」という点です。
もう一つは、岩波書店には国語辞典の権威となっている「広辞苑」があるため、一般の人からの声やクレームが一番届く*2という点です。
そして現代語の国語辞典としての内容は、広辞苑より岩波国語辞典の方が充実しています(広辞苑は国語辞典的百科事典として充実*3)。
>>>参考記事「『岩波国語辞典』の「介護」の語釈がなぜ他の辞書より充実しているのか 考察しました」
岩波国語辞典がよしとしていれば、まぁ使っていいんだろうと安心できます。誤用をはっきり書いている明鏡国語辞典より、私は頼りにしています。
また▽(注記)にある、そのことばに関連する様々な付帯情報もよく参照しています。
三省堂現代新国語辞典
角川必携国語辞典にない、新語やカタカナ語、新しい用法を確認するときに使います。
また、類義語の比較の囲み記事や漢字の立項、漢字の筆順、百科語の固有名詞があるところなど、角川必携国語辞典とよく似たつくりになっているので、全般的にサブとして使っています。
例解新国語辞典
主な対象が中学生なので、よりわかりやすいことばで表現したい時に参考にします。
また、「誤解されすいことば・あたらしい言い方」の説明が詳しいので、「敷居が高い」や「煮詰まる」など使いかたが気になることばをよく確認しています(>>>『例解新国語辞典』に学ぶ 誤解されやすいことば・新しい言いかたの15選)。
囲み記事に学ぶことも多いです(「おき」と「ごと」の違いがわかる国語辞典はどれだ? 手持ちの17種でNo.1は なんと中学生用の『例解新国語辞典』)。
特に、「人は、心の中にも道をつくる」という一文は、国語辞典の中で出会った中で1、2を争う名文です(>>>『例解新国語辞典』の囲み記事から 日本語が好きになる名文の5選)。
物書堂のアプリ版 三省堂国語辞典・新明解国語辞典・大辞林
角川必携国語辞典にないことばを調べるときや、説明がしっくりこないときに使います。一度に三つの辞書の内容を調べる事ができて便利です。
また三省堂国語辞典については、紙の辞書としてのつくりがすべての小型国語辞典の中で一番好みです。
他よりも若干小さいですが上下左右の余白を少なくして、中は見やすいようにする工夫を感じます。たまに無性に手にとってパラパラ見たくなります。全部が三省堂国語辞典のようなつくりだったらいいのに、と思うくらいです。
以上、角川必携国語辞典の他によく引いている国語辞典の紹介です。みなさまの国語辞典選びの参考になると幸いです。
>>>角川必携国語辞典のチェックはこちら!!
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